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焼肉屋はその飲食スタイルゆえに、飲食店の中でも特に開業コストがかかります。常連客を呼び込む焼肉屋を作るためには、味の良し悪しも重要ですが、まずは設備の準備と内装づくりを優先しなくてはなりません。
この記事では、これから焼肉屋を開業しようと考えている方に向けて、主に内装づくりの注意点や費用についてご紹介します。
焼肉屋は調理機器が多く必要なため費用がかかる
焼肉屋の醍醐味といえば、お客様が各々のテーブルで自由に肉を焼く独自のスタイルです。
しかし、完成した料理を店が提供するだけの飲食店と違って、テーブルごとに調理機器を準備しなければならない焼肉屋は、開業時に準備しなければならない設備の数も多くなります。加えて、他の飲食店でも行われている壁や床の張替えも、当然焼肉屋も行わなければなりません。
従って、焼肉屋を開業する時の内装コストは、自ずと他の飲食店よりも高くなる傾向にあります。
人気焼肉店の内装に共通するポイントとは?
人気焼肉店の内装に共通するポイントとしては、以下のようなものが存在します。
ターゲット層がわかりやすい
一口に焼き肉店といっても、食べ放題の激安店から高級肉を使った本格店までさまざまです。人気の焼き肉店は、お店のターゲット層がどこなのかがわかりやすいです。
高級志向の焼き肉店ならば立地はもちろんのこと内装もレストランのような上質な雰囲気があります。一方、格安を売りにしている店ならば、入りやすい大衆的な雰囲気の内装をしています。
一目見て、その焼き肉店がどのような層を求めていて、値段がいくらくらいなのかがわかりやすいと、お客さん側にとっても入りやすく、安定した売上をあげることが可能になってくるのです。
清潔感がある
焼き肉店は、厨房だけでなくお客さんがそれぞれのテーブルで肉を焼くので、店全体に油が飛び散ったりしてしまいます。煙で壁が汚れたり、気になるニオイが発生したりすることもあるでしょう。
焼き肉店である以上、ある程度の汚れやニオイは仕方がない部分があります。しかしながら、飲食店において清潔感は何よりも重要になってきます。人気の焼き肉店は清潔感があるという共通点があるのです。
壁や床などを汚れに強い素材にしたり、汚れが目立つ白の内装にするのではなく、やや暗めでシックな内装にし、汚れが目立たない工夫をしたりもしています。
一人のお客さんや女性が入りやすい工夫がされている
焼肉屋というと、ひと昔前までは体育会系のイメージが強く、単独の方や女性は入りにくいものとされていました。しかし、最近では女子会で焼き肉店を利用する女性や、会社帰りに気楽に一人焼き肉を楽しむ人も増えています。
ですので、最近は高級店のようなカウンター席や女性のためのニオイ消しなどを準備している店が増えてきています。
人気焼肉店の内装に共通するポイントとしては、一人のお客さんや女性が入りやすい工夫がされていることがカギとなっています。
焼肉屋の内装づくりのポイント
焼肉屋の開業費用を抑える最も重要なポイントは、「居抜き物件」を活用することです。また、油汚れや煙をどう処理するかも、焼肉屋の内装づくりでは欠かせない課題となります。

焼き肉屋の居抜き物件を活用する
居抜き物件とは、前の所有者が使っていた設備が残っている物件のことです。
設備工事費用がかさむ焼肉屋では、開業費用を抑えるためには、できるだけ居抜き物件を選んでおきましょう。排気ダクト工事が済んでいるだけでも、焼肉屋の開業では大きな節約効果があります。
ただし、焼肉屋以外の飲食店として使われていた居抜き物件を選んでしまうと、排煙設備が不足していたり、焼肉屋に必要のない設備があったりして、設備の追加または撤去費用が発生し、かえって余分な開業費用が発生してしまいますのでご注意ください。
煙や油が不快にならない内装がカギ
これから開業する焼肉屋にとって、調理時に出る油と煙をいかに抑えるかは死活問題です。排気工事を行うことはもちろん、油汚れが壁や床に残らないように、水ぶきしやすく汚れに強い内装材を選んでおきましょう。
壁や床などの内装工事は、坪単価で約30万円前後が相場ですが、耐久性が高い内装材を選べば、坪単価はさらに10~20万円ほど高くなります。
しかし、耐久性や機能性を妥協して価格が安い素材を選んでしまうと、油汚れで数年で傷んでしまい、店内が汚れてみすぼらしくなって結局張替えが必要になってしまいます。他の飲食店に比べて座席周辺に油が跳ねやすい焼肉屋であればこそ、できるだけ汚れに強い素材や水吹きできるタイプなど、機能が付いた内装材を選んでおきましょう。
広告費や人件費も忘れずに
焼肉屋の開業に必要なのは内装や設備の工事費用だけではありません。広告費や人件費といった他の費用に余裕を割けるように、物件探しの段階から開業時のコストを考えて動くようにしましょう。
ほかにも、こまかな内装ポイントとして下記が挙げられます。
個室を設ける
より多くの客層に利用していただけるように、個室を設けることが大切です。個室の方が落ち着いて焼肉を楽しめる方もいます。また、接待の場として焼肉店を選択する企業もあるでしょう。接待は個室での食事が原則のため、接待に適していると判断されれば継続的に利用してもらえる可能性もあります。
女性客に配慮する
1人で焼肉を楽しむ女性客に配慮して、カウンター席を多く設置したりテーブル席に仕切りを作ったりすることが大切です。そのほか、化粧室にマウスウォッシュや綿棒、あぶらとり紙、爪楊枝などを設置するのもよいでしょう。
スポットライトで居心地の良い空間を作る
焼肉店は、こまめに清掃していても所々に油汚れが目立ちます。そのため、店内を暗くして、テーブルや通路をスポットライトで照らすのがおすすめです。汚れが目立ちにくくなるだけではなく、店内に立体感が生まれます。
また、壁にスポットライトを当てれば、ぼんやりとした優しい光で客席を照らすことが可能です。居心地の良さを感じてもらえることで、リピート率が上がるでしょう。
壁は、色使いでもそのお店の明暗がわかれると言われるくらい重要なポイントです。壁の使い方をこちらの記事で紹介していますので、ぜひあわせて読んでみてください。
壁の使い方が明暗を分ける?飲食店の内装で「壁」が重要な意味を持つワケ
コンセプトを明確にしてから内装デザインの準備をしましょう
近年は焼肉屋のコンセプトも多様化しており、複数人でテーブルを囲む従来型の焼肉屋だけではありません。コンセプトを明確にしてから内装デザインの準備をするのが大切です。具体的な事例とおすすめのデザインをご紹介します。
おひとり様をたくさん取り込みたい事例
ビジネス街や駅の近くにあって、会社帰りの単身者を多く取り込みたい店ならばおひとり様が入りやすい・楽しみやすい内装デザインを目指しましょう。
大きなテーブルだけでなく、カウンター席を用意したり、大きなコンロだけでなくカウンターにミニコンロを設置したりします。
女性をたくさん取り込みたい事例
焼肉というと男性のイメージが強くありましたが、最近は女性も焼き肉をかなり楽しむようになっています。特に、今の20代女性は「上質で美味しいものをラグジュアリーな空間で楽しむ」ことを求めていて、フレンチなどよりも敷居が低く、身近で行きやすい高級焼肉店を好む傾向にあるのです。
このような女性の需要を取り込みたいのであれば、カフェのような内装デザインを準備しましょう。
高級志向を出したい場合
「美味しいお肉が沢山食べられる」というコストパフォーマンスを重視せず、一品数千円を超えるような“高級焼肉”なども需要を増やしつつあります。
このような店舗を目指すならば、内装も、モダン風やスタイリッシュ風など料理の価格に合わせた高級志向のデザインとするようにし、ディナーや接待にも利用できる店を目指しましょう。
焼肉屋のコンセプトは、客層や客単価に対する設備に大きく影響します。そして、コンセプトが違えば内装づくりの方向性も変わりますので、内装工事前に開業する焼肉屋のコンセプトを必ず明確にしておきましょう。
焼肉屋で必ず準備すべき設備と費用
焼肉屋の内装工事では、レストランや居酒屋、カレー屋、ラーメン屋などの他の飲食店に比べると設備工事費用がかさむことを覚悟しなければなりません。
お客様が食事をする座席スペースと、厨房の内装工事について、それぞれご紹介いたします。
各座席の内装工事とその費用
お客様が各々のテーブルで調理を楽しむ焼肉屋は、席それぞれに肉を焼く「ロースター」と、「排煙口」の取り付けが必須です。
ロースターは、煙を極力抑える無煙ロースター(ノンダクトロースター)を選ぶと良いでしょう。煙が出るロースターを設置した場合は、排煙口の天井取り付け工事が別途発生します。
さらに、吸煙機を各座席に取り付けるためには、店内全体の天井や壁のダクト工事も必要です。
● 無煙ロースター設置工事…約20~30万円(機材1台あたりの価格・取り付け工事込)
● 吸煙設備取り付け工事…約10~20万円(機材1台あたりの価格・取り付け工事込)
● 店内全体のダクト工事…約100~200万円
【豆知識】無煙ロースターは、排煙の仕組みによって次の3つに分類されます。
●ダクトタイプ(据え付け型)
ロースターテーブルを床に固定し、床下のダクトと繋げて排煙する仕組みです。多くの焼肉屋が採用しています。費用は1台につき取り付け工賃込みで20万円~です。
●ノンダクトタイプ(可動型)
ロースターテーブルに排煙機能が組み込まれているタイプです。ダクトの設置が不要なため、ロースターテーブルを自由に移動できます 。費用は1台につき35万円~です。
●上引きタイプ
ロースターテーブルの真上に設置した排煙フードが煙を吸い取って屋外へ排出するタイプです。低コストで導入しやすいうえに、手入れが簡単です。価格は10万円~と、最も安くなっています。
厨房の内装工事とその費用
焼肉屋の厨房では、肉を保管する冷蔵庫や、簡易な調理や盛り付けを行えるカウンターのほか、網を洗う広めのシンクや食洗器などが必要です。
また、肉以外のチャーハンや麺類といったサイドメニューも豊富に用意する場合は、一定火力以上の業務用コンロも用意する必要があるでしょう。
● 業務用冷蔵庫…約10~15万円(1台あたり)
● 調理・盛り付け用の作業台…約2~5万円(1台あたり)
● シンク…約2~3万円(1台あたり)
● 食洗機…約15~30万円(1台あたり)
● 業務用3口コンロ…約5~15万円(1台あたり)
● 業務用炊飯ジャー…約2~3万円(1台あたり)
焼肉屋の内装デザインにかかる費用をおさえるには?
焼肉屋の内装デザインにかかる費用をおさえるには、どのようなデザインにしたいのかをしっかりと決めておくことが大切になってきます。
内装デザインをする場合、図面が必要になってきます。この図面を作成する作業にはかなりの費用が発生します。一度、決まった図面を変更する場合は、新たに図面を作り直さなくてはならないので、設計料が追加されます。
さらに、イメージがしっかりと決まっていないと、いくつかの図面パターンを提示してもらうことにもなってしまい、デザイン料が高額になるのです。
客層や扱うメニューを考えることで店舗のコンセプトをしっかりと決めておき、何度も図面を作ってもらわなくてもよいようにすることが、費用の節約につながるでしょう。
おわりに:居抜き物件は競争相手が多い
焼肉屋は、元の設備がそのまま残った居抜き物件を選ぶ傾向にありますが、競争相手が多いです。ご自身が開きたい焼肉屋のコンセプトに合った居抜き物件を探すのは苦労するかもしれませんが、お困りの際は、店舗デザインラボにご相談くださいませ。