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店舗の内装は、デザイン次第で大きな集客効果を生み出せる要素です。店舗の内装工事は、業者任せにせずDIYで仕上げることも可能ですが、知識が不十分な状態でDIYに取り掛かると思わぬトラブルを招く恐れもあります。オリジナルのDIYで唯一無二の内装デザインを手に入れるためにも、DIYが行える箇所とDIYをしてはいけない箇所の区別や内装DIYのポイントを押さえておきましょう。
店舗内装のDIYに取り掛かる前に確認すること
DIYはしっかり準備を整えて取り掛からなければ、お店の開業が間に合わなくなったり店舗の安全性を著しく落としたりと、マイナスの結果をもたらす恐れがあります。安全性に配慮して計画的にDIYを行うためにも、店舗内装をDIYするときの注意点を知っておきましょう。
店舗内装をDIYするために必要な日数を調べる
DIY作業に取り掛かる前に、着手から完成に必要な期間を必ず調べておきましょう。無理なスケジュールで内装のDIYを急いで終わらせたばかりに、乾燥していない塗料がお客様の服や小物に付着したり棚が座席に落下したりすると、謝罪や弁償が必要になるだけでなくお店の大きなイメージダウンにも繫がります。
DIYのスケジュールを組むときは、塗装や接着剤の乾燥時間など各工程にかかる期間なども細かく計算し、完成後に内装全体を見渡して微調整できるよう、余裕を持ってスケジュールを組むことがポイントです。
内装DIY以外の開店準備も忘れずに
店舗内装のDIYにかかりきりになって、開業に必要な申請や手続きに遅れや漏れが生じてはなりません。特に役所関係の申請は所要日数や提出期限が厳しく設定されているため、手続きを忘れると店舗のオープン日が大幅に遅れてしまう可能性があります。
内装DIYの目的を「節約」にしてはならない理由
内装工事をDIYで済ませることができれば、業者に支払う手間賃がかからずリフォーム費用を大きく節約することができるかもしれません。しかし、内装工事費用を節約するために慣れない大工作業や高所作業を行った結果、ケガや事故を起こしてしまうと余分な補修費や医療費が発生してしまいます。
さらに、DIYで作った棚などが落下してお客様にケガを負わせたとなれば、店舗を続けることすら困難になりかねません。DIYの節約効果はあくまでも二次的なメリットとして考え、安全性に関わる箇所の施工は必ず専門の業者に依頼しましょう。
店舗内装DIYの流れ、進め方
上記の内容に注意しながら、実際にDIYをするにあたっての流れを解説します。
やみくもに進めてしまうと、抑えられた箇所にコストをかけてしまったり、触ってはいけない箇所をDIYしてしまったりと、余計な出費に繋がる可能性があります。
- 専門の内装業者と打ち合わせをする
- 内装業者に見積りをもらう
- 業者に依頼する部分と自分でDIYを行う部分を決める
- 自分でDIYをする部分の必要工具・材料を揃える
自身でDIYを行うにしても、まずは一度業者と打ち合わせをすることが大切です。実店舗を見てもらうことで、施行箇所や工程(やり方)に関する正しい知識をプロから直接習得できます。
また、配管の老朽化など素人では判別が難しい箇所を合わせて確認してもらいましょう。打ち合わせができたら、項目ごとに費用明細が記載された見積書をもらってください。そこから自身でDIYを行う部分を決め、必要な道具を揃えていきます。
DIYしても良い安全なラインは?DIYできる箇所・できない箇所を区別しよう
内装の中には、電気や水道の配管など資格がなければ手を加えられない箇所もあります。まずはDIYが可能な範囲を調べ、自分たちでDIYが行える工事を見つけていきましょう。
店舗内装でDIYできない箇所
計画的にDIYを進めるためにも、まずはDIYを行ってはならない箇所を把握しておくことが重要です。
配管工事には資格が必要
電気・水道・ガスなどの配管工事は、資格がなければ行えません。
電気の配線は、「電気工事士」の資格が必要です。ガスは、「簡易内管施工士」がなければ、配管や元栓の位置変更、元栓の増設といった施工ができません。水道は、給水装置の設置に「給水装置工事主任技術者」、下水道の工事に「下水道排水設備工事責任技術者」という別の資格が必要です。
無資格でDIYを行った結果、漏電や水漏れが起きても保険が下りませんので、万が一設備が故障したりお客様に迷惑をかけたりしても、自己負担で補修や弁償を行うことになってしまいます。なお、電気器具の交換や蛇口の交換など配線に手を加えない作業であればDIYは可能ですが、どこまで手を加えて良いか判断しにくいようであれば、安全のためにも専門の業者に依頼すると良いでしょう。
耐久性を要する箇所
資格の有無に関わらず、お客様の安全性を脅かしかねない箇所はできるだけDIYを避けた方が良いでしょう。
例えば、重い天然板でできたカウンターや、天井吊り下げ式のインテリア、壁付けの食器棚といった重い設備の取り付けが甘いと、万が一落下したときにお客様にケガをさせてしまう恐れがあります。特に、柱や梁、階段、窓や玄関ドアといった開口部などは建物の構造に関わる部分ですので、決して手を加えないようにしましょう。
また、床も耐久性が不足していると抜けてしまう可能性があります。脚がはまって抜けなくなったり、割れた木材で脚に大けがを負ったりする恐れもあるでしょう。
店舗内装でDIYできる箇所
店舗内装のDIYは、基本的に配線や配管工事以外であれば資格がなくても行えます。
壁と床のリフォーム
壁や床は、店舗内装で最もDIYを行いやすい箇所です。
古い壁紙を剥がして新しいクロスに張り替えるだけでもインテリアの雰囲気はがらりと変わります。あえてコンクリートが剥き出しの状態に留めて、無機質な雰囲気を演出してみても良いでしょう。床のフローリング張り替えもDIYで行えますが、床下地材にフローリング材を打ち付ける作業は難易度が高いため、手軽に雰囲気を変えたい場合はクッションフロアやタイルシートを使った簡単なDIYもおすすめです。
塗装やペインティング
DIYのスケジュールに余裕があれば、壁を塗装で仕上げてみましょう。手作業で塗られた壁は、クロスとは一味違う温かみのある内装になります。また、乾くとチョークでペイントできる「黒板塗料」や磁石がくっつく「マグネット塗料」、アンティーク風の仕上がりになる「アイアン塗料」といった機能付きの塗料も販売されていますので、お店のテイストに合わせて選んでみると良いでしょう。
照明器具の交換や棚の取り付け
照明器具の交換程度であれば、DIYできる可能性があります。また、壁に穴をあけて棚を取り付けることも可能でしょう。ただし、床と並行に取り付けるのが難しいため、完璧を求めるのであればプロに任せることが大切です。また、店舗の内装と棚のデザインがマッチしない場合もあります。プロに任せれば、素材選びからサイズ調整まで対応してくれるため、安心できるでしょう。
自分でDIYできるかどうかの安全なラインの見極めは素人では難しいため、プロに任せることをおすすめします。
店舗の内装DIYを成功させるために
自由度が魅力のDIYでも、やみくもに材料を買ったり作業を進めたりするわけには行きません。DIYで予算内で理想の内装デザインを作るためにも、DIY前に必ず以下の点を確認しておきましょう。
最初にDIY時と業者施工時の金額を比較する
DIYの工具や部材を揃える前に、
● DIYで材料を揃えたときの費用
● 業者にすべて任せたときの費用
の2つを必ず比較しましょう。
工事の手間賃を節約できるはずのDIYで、材料代が高くついてしまうとせっかく手間をかけて行うメリットがなくなってしまいます。材料を購入する前に必ず内装業者にすべて工事を任せたときの見積もりを取り、予想より安く済みそうな箇所があれば業者に任せるなどしてDIYの段取りを考えていきましょう。
DIYを成功させる鍵は「統一感」を持たせること
どんなお店か明らかにするためにも、内装のデザインには「統一感」を持たせることが大切です。
例えば、窓やエントランスにはアジアンテイストのすだれが置かれているのに、座席はシックな洋風のヴィンテージスタイル。かと思えばメニュー表や器は和風といったちぐはぐな内装だと、客は落ち着いて過ごせずストレスを感じてしまいます。
作業を進めるうちにテイストの方向性がずれてしまわないように、理想とする内装の写真をお手本にしながら完成形をしっかり図面に起こしておきましょう。
DIYできない部分は業者に依頼しよう
DIYする箇所と業者に任せる箇所を分担することによって、すべてDIYで仕上げたときよりも少ない費用と手間で済むこともあります。内装工事を部分的に業者に頼む場合は、自分が希望する内装のイメージを伝えるだけでなく、専門家の意見も素直に取り入れることがポイントです。
内装業者に依頼した方が安く済むケースもある
内装工事の専門業者なら、安い部材の仕入れルートや施工の手間を最小限に抑えるコツを知っています。あるいは、安い部材で内装をオシャレに見せるテクニックなども持っていますので、無垢材やレンガといった価格が高い部材を使わずに、安価な代替品で理想の内装に仕上げてくれるでしょう。
安く済ませたいから…と無理して自分でDIYをしたものの、失敗してしまったということも案外多いのです。
こちらの記事ではそんな失敗談をまとめましたので、ぜひあわせてご覧ください。
失敗談!成功談!店舗の内装DIY体験談を一挙公開
業者と打ち合わせをしながらDIYを進めよう
内装工事の一部を専門業者に任せる場合は、必ず業者と打ち合わせながら進めましょう。内装工事で作業の順番を誤ると、大きな手間や部材のロスが発生してしまいます。例えば、自分たちで取り付けた棚のせいで業者が配管工事を行えなくなった場合、棚をいったん解体する手間が増え、場合によっては解体費用ややり直し費用を業者から請求されかねません。
余計な手間をかけず計画通りに内装工事を進めるためにも、自分たちがDIYを行う箇所と業者が担当する箇所と順番について、しっかり打ち合わせておきましょう。
店舗の内装DIYに関する体験談
開業・リフォームどちらでもDIYで内装費用を抑えたいという方は多数いるようです。
開業時の成功談:DIYすると費用、出来栄えともに大満足に仕上がる
床に木材を使用して温かみのある感じにしたかったのですが、気に入った木材が高く予算オーバーしてしまったため、安い木材を買い自分たちで木目の色がでるようにペンキで二度塗りなどをして床を仕上げました。
新品の板を買ったのですが出来上がりはいい感じに使い古されたような質感になりましたし、レトロな古い感じににしたかったのでできたその後にわざと白いペンキで汚したりしました。
入口の扉や店内のトイレの扉もアンティークっぽいものを探してたのですが、いいなと思うものは値段が高かったため、それも新品のものを買い、自分たちでヤスリを使って汚したりペンキを塗ったあとにダメージ加工したりと色々工夫してオリジナルな扉を作りました。照明の傘の部分も黒スプレーをしたりしてダメージ加工したりと大満足のDIYでした。
(30代 女性 2013年3月頃)
リフォーム時失敗談:雑に見えるが手造りには規格物には出せない味がある
借りた店舗はスケルトンの8.6坪の倉庫跡でした。長方形の入り口から入って一番奥にトイレだけが設置されてる状態です。資金が無かったので私と大工の友達2人での作業でした。私の住む所は離島です。運送会社によっては離島中継料が掛からないので現地の高い資材には手を出さず、ネットでの購入が主になります。
まずは建築資材の調達で、とにかく安いを基本に木材、釘、ペンキ、等を仕入れる為にネットをフル活用してリストアップし、送料が安い業者に頼みました。資材が届き運搬も私がして、なるべく経費を掛けないように心がけました。資材が揃ったところで材木の加工も、私と大工の友達の道具で加工しました。
しかし施工にかかると問題が次々と出てきます。材木が乾いてなくて切った縮む、板によっては貼り付けた後強度がなかった。貼り合わせた床が縮んだ為に隙間が出来て、急遽シリコンで埋めて誤魔化す…という状況でした。
中でも一番苦労した作業が水回りでした。配管からシンクに蛇口を着け、いざ元栓を開けたらどこからか吹き出し慌てて元栓を閉め、何度となく水漏れには悩まされました。また入り口周りの施工では、飾り板を張ったがドアに引っ掛かり開かなくてやり直しました。
一番の大失敗は厨房の床を掃除するのに水が流せないことでした。流す溝がなく厨房機器を入れた後に気付いたのですが後の祭りでした。そんなこんなでしたが、出来てみればかなり味のあるお店が出来ました。
(50代以降 男性 2012年9月頃)
失敗談!成功談!店舗の内装DIY体験談を一挙公開 | 内装ハック 店舗内装やデザインの参考サイト
おわりに
自分たちの手で一から作り上げて完成させる達成感こそ、DIYの一番の醍醐味と言えるでしょう。しかし節約目的でDIYを強行すると、万が一事故やケガが起きたときに余分な費用が発生するだけでなく、DIYの達成感も得られなくなってしまいます。資格が必要な箇所に手を出さないことはもちろん、人命に関わる箇所は技術を持った専門業者に任せ、業者と連携しながら店舗の内装DIYを行いましょう。