化学物質を含まない、天然の木のみで作られた無垢材は、内装材の中でも高い人気があります。
その無垢材の表面仕上げ材として使われるのが、同じく化学物質の使用を極力抑えて作られた、自然塗料です。
自然塗料を無垢材に使うメリットや、使用時の注意点と併せて、おすすめの自然塗料メーカーをご紹介します。
自然塗料と3タイプの種類について
自然塗料とは、成分に化学物質を極力使わず、天然素材で作られた塗料のことです。
石油などの化学製品を含まないため人体や環境にも優しく、木材の成分を傷めずに長期間木材を保護することができます。
自然塗料は主に3種類
自然塗料は、主成分の違いによって3タイプに分かれています。
自然塗料の種類 | 特徴 |
オイル系 | 亜麻仁油や桐油などのオイルで作られた塗料。木材に塗るとオイルが内部に浸透して色が付くため、木材の質感や木目がはっきり目立つようになる。 |
ワックス系 | 自然界で採れる「蝋(ろう)」を主線分にした塗料。木材に塗ると、木材の表面に膜ができる。 |
ワニス系 | 樹脂から採れる「油ワニス」と、昆虫から採れる「セラックワニス」がある。木材に塗装するとツヤのある透明な膜となって表面を保護する。紫外線や水に強い。 |
自然塗料の種類によって木材の保護効果や見た目は大きく異なります。
自然塗料は無垢材との相性が抜群
無垢材とは、芯から表面まで、天然の木を余すことなく使って作られた建材のことです。
・印刷では表現できない天然の木目
・心を穏やかにする独特の香り
・使い込むほどにアンティークな風合いが増していく
などが特徴で、接着剤で密着された合板や、印刷で再現された木目にはない魅力があります。住宅や店舗の内装などでも、無垢材は特に人気の高い建材です。
無垢材の塗装になぜ自然塗料がおすすめ?
無垢材は基本的に、塗装が適さない建材です。
木材には、空気中の湿度が高い時は水分を吸い込み、湿度が低い時は放出する性質があります。これを「調湿機能」と呼びます。調湿機能を持つ木材は、表面を塗料で覆ってしまうと、木材自身の膨張と収縮によって塗料がすぐにボロボロに破れて見た目が悪くなってしまいます。
なにより、塗装して表面を覆ってしまうと、無垢材の魅力である「天然素材」「美しい木目」「木の質感」というメリットが失われてしまいます。
このような理由から、無垢材を塗装で保護する時は、木材の内部に浸透して内側から保護する、オイルやワックスタイプの自然塗料が使われます。
オイルを使うと無垢材表面の色味も多少変わりますが、木目や香りは残すことができますので、無垢材の魅力を損なわずに、表面を保護することができます。
自然塗料を使う時の注意点
自然塗料は、天然の成分で作られており安全なイメージがありますが、使う時は注意点を守らなければ、病気や事故に繋がる恐れがあります。
アレルギーを引き起こす成分に注意
天然成分で作られた自然塗料でも、含まれている成分が、人によってはアレルギーを引き起こすことがあります。
もちろん、製造に当たっては、厳しい品質検査に合格しなければならないため、すべての塗料が害を及ぼすわけではありませんが、塗料に含まれる成分にはよく目を通しましょう。
建築物に使う建材は、使用した時のホルムアルデヒド発散量を商品に記載することが義務付けられています。最高等級のものには「F☆☆☆☆」マークが表示されていますので、星の数が高いものを優先的に選ぶようにすると良いでしょう。
植物油を含む自然塗料は「発火」に注意
亜麻仁油や桐油などの植物油を含む自然塗料を使う時は、火災にくれぐれも注意しなければなりません。
オイル系やワックス系の自然塗料を使うときは、適量を布に取って、木材に塗布します。このとき、使った布をバケツやビニール袋などに集めて放置すると、布に残った自然塗料と空気中の酸素が反応して熱を帯び、発火する恐れがあります。
国民生活センターなどにも、ウッドデッキを塗装したタオルを放置したところ、発見が遅れて火災に発展してしまったケースが報告されていますので、自然塗料が付いた布は水に浸すなどして、安全に処分しましょう。
無垢材にぴったりの自然塗料メーカー4つ
以下からは、おすすめの自然塗料メーカーを4つご紹介します。
オスモ&エーデルの『オスモカラー』
オスモ社は、ドイツの老舗塗料メーカーです。日本では「オスモ&エーデル」の名で、オスモ社の塗料や建材を販売しています。
ひまわり油や大豆油などの植物油や、カルナバワックスやカンデリラワックスなどの植物ワックスなど、ほぼ食品に近い成分で作られた自然塗料が販売されています。また、自然素材でも、テレピン油や亜麻仁油など、人によってはアレルギーを起こす恐れがある成分は使わないなど、細かい点にもこだわられています。
木目が透けて見える透明度のオイルから、やや半透明の着色が可能なオイルワックスタイプまで、使用する無垢材の劣化具合に応じて、塗料を選び分けることができます。塗料のカラーも多く、海外メーカー塗料ですが、日本の住宅に調和する「日本の色」シリーズも用意されています。
AURO(アウロ)
アウロもドイツ生まれの自然塗料メーカーです。
原料となる植物は、すべて自社の契約農場で調達し、石油化合物の代わりに天然の鉱石を使って調合することで、ほぼ100%自然素材のみで塗料が作られています。
シンナーやガソリンを使用せず、オレンジオイルを溶剤としているため、塗料独特の刺激臭がなく、柑橘系の香りが広がります。また、ノビの良いさらっとした液体塗料や、ムラなく塗布できるクリーム状塗料などが用意されていますので、初めてのDIYでも失敗しにくい自然塗料です。
リボス
リボスもドイツのメーカーですが、自然塗料メーカーの中では、国内・国外問わず最大手のメーカーと言っても過言ではないでしょう。早くから自然塗料の安全性に注目し、何度も品質改良を重ね、食品に近い基準値まで改良することに成功しました。
内装用の自然塗料のほか、内装の部位ごとに使えるワックスや、100%天然の漆喰『カルクウォール』なども取り扱われています。
クリヤー仕上げの塗料でも、針葉樹の保護に適した「メルドス」や広葉樹に馴染みやすい「アルドホス」のように、無垢材の特徴に合わせて塗料の種類を選ぶことができます。そのほか、着色仕上げ塗料の「カルデット」や「タヤ」、ツヤ出し仕上げの「クノス」など、施工箇所や仕上げのイメージに合わせて、選べるラインナップとなっています。
オクタ『LOHAS OIL(ロハスオイル)』
オクタは、オリジナル塗料の製造・販売も手掛ける、建築事務所です。
全53色という、豊富な着色系オイルのラインナップから、木目や内装の雰囲気に合わせて塗料を選ぶことができます。ホワイト系やブラウン系など、定番のカラーはもちろん、ターコイズブルーやヴィンテージグリーン、ピンクに近いパープルなど、珍しいカラーも用意されています。
塗料は、施工時は液体やクリームの状態ですが、塗装後は乾燥して固まります。この乾燥を促進するために、化学物質を含む乾燥剤を配合しなければなりませんが、ロハスオイルは限りなく自然素材のみにすることにこだわり、乾燥剤を使用していません。そのため、乾燥剤を含む塗料よりも、乾燥時間は長なりますが、その代わり、オイル独特のシンナー臭や柑橘臭を伴いませんので、乾燥させているあいだも無臭の状態で過ごすことができます。
アールジェイ『いろは』
『いろは』は、広島県にあるワックスや塗料のメーカー・アールジェイ社が販売している、浸透タイプの自然塗料です。
日本の会社が作った自然塗料だけあって、日本で昔から使われてきた顔料「ベンガラ」が成分に使われている点が特徴です。日本の家屋によく馴染む和風カラーのほか、無色のクリヤータイプを選ぶこともできます。
また、『いろは』に含まれているベンガラには、「耐候性(たいこうせい、紫外線や温度変化に強いこと)」があるため、塗装すると無垢材を長期間守ることができます。
日本キヌカ『キヌカ』
『キヌカ』は石川県の会社・日本キヌカが販売する、お米を主原料とする浸透タイプの自然塗料です。昔の家が「米ぬか」で磨かれていたことにヒントを得て作られました。
お米を原材料としているため刺激臭が少なく、亜麻仁油の独特のニオイが苦手な方や、食卓や小さいお子様が使う箇所の塗装などにおすすめです。
大橋塗料『バトン』
『バトン(VATON)』は、建築用塗材メーカーである大橋塗料が販売している、「F☆☆☆☆」の認定を受けた浸透系の自然塗料です。
シックハウスの原因となるトルエンやホルマリンが含まれておらず、ニオイも少ないため、小さなお子様がいるご家庭でも安心して使えます。
透明やナチュラルブラウンのほか、レッドやブルー、イエローといった明るい色味も選ぶことができ、屋外・屋内問わずあらゆる木材を塗装することが可能です。
大阪塗料工業『ユーロ』
『ユーロ』は植物油を原料とする自然塗料です。塗装するとオイルが木材に浸透し、成分に含まれる蜜ロウワックスによって撥水効果も得ることができます。表面に当たる水をはじきつつ、木が内側から湿気は外に逃がすため、塗装をしても木材の調湿効果を妨げることはありません。
さらさらとして塗りやすく、屋内家具のDIYや内装材にも安心して使えるほか、紫外線に強い屋外用タイプであればガーデニング用品やウッドデッキなども塗装が可能です。
おわりに
自然塗料は、無垢材に浸透して表面を保護しますが、屋外の外壁や屋根に使用する合成樹脂塗料ほど耐久性は高くありません。
しかし自然塗料は、合成樹脂塗料のように無垢材の調湿機能を妨げないため、時間が経っても木目や風合いを残したまま無垢材を長持ちさせることができます。
無垢材の色味を大きく変えてしまう着色タイプや、全く変化しないクリヤータイプやつや出しタイプなどがありますので、塗装後のイメージに合うかどうか端材で試し塗りして選ぶと良いでしょう。