禁煙にすべきか、喫煙可にすべきかは飲食店にとって頭を悩ませる大きなテーマです。
この記事では、健康増進法改正の動きなども踏まえながら、飲食店における喫煙の可否について開業前に知っておきたいポイントをご紹介します。
飲食店は喫煙ルールが経営に深く影響する
飲食店を開業するにあたり、お店を喫煙可にすべきか、全席禁煙にすべきかは悩ましい所です。
2020年に東京オリンピックという国際的なイベントを控えている日本では、飲食店など公共施設での受動喫煙防止の対策が進みつつあります。
飲食店は完全禁煙になる可能性が濃厚
喫煙行為の問題点は、受動喫煙にあります。
受動喫煙とは、タバコを吸わない人が副流煙を吸ってしまうことで、喫煙と同じ状態になることです。
この受動喫煙対策の遅れをWHOに指摘された日本政府は、平成30年3月に「健康増進法」の改正案を閣議決定しました。
改正案では、受動喫煙の防止対策が中心になっており、その中には飲食店の喫煙ルールも定められています。
改正案では飲食店は原則として屋内禁煙とし、喫煙専用室を設置すれば屋内でも喫煙できることになっています。
なお、資本金5,000万円以下で、店内の客席面積が100㎡以下のお店であれば「喫煙」または「分煙」と掲示することで屋内喫煙が可能になります。(※2018年4月時点)
飲食店のタイプ別・喫煙ルールの影響度
飲食店における喫煙ルールの選択肢としては、
● 全席喫煙可
● 分煙可
● 全席禁煙可
の3つがあります。
なお、分煙とは喫煙スペースを壁などで隔離して換気口を設け、禁煙席の客や従業員に煙が届かないようにすることです。
それぞれのルールを選んだ時のメリットやデメリットについて、飲食店のタイプ別に見てみましょう。
バーや居酒屋など
バーや居酒屋などアルコール類がメインのお店であれば、小さい子供や家族連れはそもそも入店しませんので禁煙化にするメリットは少なく、むしろ客足を遠ざけてしまうと言えるでしょう。
しかし、居酒屋やバーの利用者にも、タバコの煙を気にせず飲食を楽しみたいという人もいます。
そのような人に配慮して分煙可しても、客としてはわざわざタバコを吸うために離席しなければならず、店側としては限られた店内スペースに喫煙スペースを設置しなければならないため、費用対効果はあまり高くないと考えられます。
ただし、法や条例によって完全禁煙にしなければならない店舗の面積は異なります。
開業予定の店舗を全席喫煙可にしても問題がないか、お住まいの自治体の条例や国の法改正をしっかり把握しておきましょう。
カフェや喫茶店など
カフェや喫茶店は、大切なお客さんとの打ち合わせや家族で出かけた時の休憩などで利用されることも多いため、全席禁煙にすることで常連客を呼び込めるかもしれません。
しかし、多くのチェーン系カフェやファーストフードで禁煙化が進みつつある昨今、タバコが吸えるカフェや喫茶店は愛煙家にとって貴重な休憩スペースです。
「ちょっとタバコを吸うためにコーヒーを一杯だけ頼む」という客でも、常連になれば売り上げへの影響度は高くなります。
このように、カフェや喫茶店は喫煙者・非喫煙者の両方が利用者層に含まれるため、喫煙スペースを別途設ける、子供連れや学生が多い時間帯だけ禁煙にするなど、分煙を意識した店づくりが必要です。
ファミリーレストランなど
ファミリーレストランは他の飲食店に比べると、子供や高齢者などが多く利用するお店です。
全席禁煙にすることで、混雑する時間帯でもすべての客席面積を埋めることができ、「喫煙エリアに空きがあるのにお客様を案内できずお待たせしてしまう」といった無駄も省けるでしょう。
大手ファミリーレストランも2000年代から徐々に全席禁煙化が進んでおり、分煙していた企業も今後禁煙化になると予測されます。
ところがビジネス街にあるお店などは利用者層に家族連れが少ないため、完全禁煙にしてしまうと休憩時にタバコを吸いたい会社員から敬遠されてしまう恐れがあります。
店舗の立地から利用者層を分析し、必要であれば喫煙スペースを用意して分煙タイプも検討した方が良いでしょう。
お店の利用者層から禁煙ルールを考えよう
料理の味や香りを楽しみたい方、タバコの煙が苦手な方にとっては、全席禁煙のお店は有難い存在です。
しかし、喫煙スペースを求めて入ったお店でタバコが吸えないとなれば、愛煙家の利用者はがっかりしてしまうでしょう。
飲食店経営者の中にも、「喫煙可にしているから客を呼び込める」という声もあれば、「禁煙化にしているから通い続けてくれる人がいる」という正反対の声も挙がっています。
喫煙タイプの分析を通じてコンセプトを確立すること
このように、お店の喫煙ルールの是非は利用者層に左右されます。
法改正の動きや世論を知っておくことももちろん大切ですが、開業する自分のお店の利用者層を、まずは正しく分析することが何より大切と言えるでしょう。
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おわりに
喫煙行為というものは、楽しむ方も不快に感じる方もいるため、善悪のどちらにも分けられないという難しい性質があります。
特に飲食店は、食事を楽しむ場所であると同時に休憩する場所でもあるため、喫煙ルールの選択は売上と密接に関係しています。
利用者層をしっかり分析し、吸う人も吸わない人も快適に過ごせるお店づくりを目指しましょう。