店舗の内装は、好きなものをどこにでも配置して良いわけではありません。
建築基準法や消防法で定められた「内装制限」というルールを守って、火災のリスクを増やさないように注意する必要があります。
この記事では、内装工事をする前に知っておきたい、内装制限の内容や、開業時に守るべき理由などを解説します。
開業時に忘れてはならない「内装制限」とは?
内装制限とは、火災が起きた時の被害を最小限に食い止めるために、内装材の使用ルールを定めたルールのことです。
具体的に言い換えると、延焼の恐れが高い部分には、燃えにくく有害ガスを発生させない素材を使うことを意味します。
内装制限は、「建築基準法」や「消防法」などによって規定されていますが、店舗所在地の自治体がルールを定めていることもあります。
内装制限の対象になる建物は?
飲食店は、建築基準法によって「特殊建築物」に分類されています。
また、建築物は火災発生時の耐久性によって段階が分けられており、該当する段階によって、内装制限の対象になるかどうかの規模が異なります。
● 耐火建築物…3階以上の部分の床面積合計が1,000平米以上
● 準耐火建築物…2階部分の床面積合計が500平米以上
● その他の建築物…床面積が200平米以上
※床面積が10平米以下の建築物は、内装制限の対象にはなりません。
そして、これらの建築物に含まれる、1.2平米以上の壁と天井が内装制限の対象となります。
消防法で内装材が規定されている
消防法では、カーテンやブラインド、絨毯などに、燃えにくい素材を使うよう規定しています。
先ほど紹介した特殊建築物も、消防法の適用対象ですので、内装には防火材料を使わなければなりません。
防火材料の区分を知っておこう
内装制限の対象となる店舗には、防火材料を選ばなくてはなりません。
防火材料に該当するかどうかは、建築基準法の中で、
● 炎を上げて燃えにくいこと
● 有害ガスを発生させないこと
● 変形したり溶けたりしないこと
の3つを満たしていることが条件とされています。
>防火材料の分類
さらに、防火材料は、火災発生後の燃えにくさによって3種類に分類されます。
● 難燃材料…火災発生から5分間燃えないもの
● 準不燃材料…火災発生から10分間燃えないもの
● 不燃材料…火災発生から20分間は燃えないもの
難燃材料の例としては、厚さ7mm以上の石膏ボードなどが該当します。
準不燃材料には、厚さ9mm以上の石膏ボードなどがあります。
そして不燃材料には、コンクリート、れんが、ガラス、漆喰、瓦、金属板など、無機質または金属を素材とするものが含まれます。
特殊建築物では、居室の壁と天井には「難燃材料」を、通路や階段には壁・天井ともに「準不燃以上」を使用しなければなりません。
開業時に内装制限を守っておくべき理由
建築に詳しくない方は、「内装制限があることはわかったけれど、専門的でルールを覚えられない」とお困りかもしれません。
しかし、開業時に内装制限をしっかり守っておくことは、安全に経営を続けて行くためにも、ご自身の財産を守るためにも大切であり、何よりも、店舗の周りにあるお店や近隣住人の命を守るためにも欠かすことはできないのです。
古い建物は内装制限が守られていない恐れがある
建物を新築する時は、建築確認申請を行う必要があり、この段階で内装制限などのチェックに引っかかると建物を建てることはできません。
そのため、内装制限が不適合のまま建築確認申請が通ることはほとんどありませんが、まれに築年数が古いビルなどは内装制限を違反しているケースがあります。
店舗用の物件を探す時は、内装制限をクリアしていることを不動産業者に確認しておくと良いでしょう。
内装は開業後は簡単に変更できない
内装工事は、一度お店を開業してしまうと簡単には行えません。
内装材を交換するためには、既に配置されている重い家具や設備を移動するだけでも、大変な手間がかかります。
また、キッチンや手洗いなど配管が通っている機器の場合は、設備業者を呼んで解体工事をしてもらわなければ、リフォームに進むことさえできません。
解体費用や搬出費用がかさむ分、開業後の内装工事は、新規開業時よりも費用が高くついてしまいます。
何よりも、内装工事をしている間はお店が営業できませんので、その分の売上もなくなってしまいます。
以上のことから、開業時は内装制限を必ず守り、後からやり替えが起きないよう注意しなくてはなりません。
おわりに
店舗の内装に使う防火材料は、ご自身で一つずつ探し出さなくても、内装業者にデザインを伝えれば、希望に適したものを選んでくれます。
色や素材を決めてしまう前に、まずは内装工事業者に仕上がりのイメージを伝え、防火基準を満たした材料の中からイメージに近い部材を選んでもらいましょう。