日本で過ごしている以上、いつ巨大地震が起きても不思議ではなく、オフィスで業務中に、大きな地震に巻き込まれる可能性も十分考えられます。
もし、大地震が発生した時は、お客様に迷惑をかけないよう復旧に努めることはもちろんですが、何よりも、オフィスで働く従業員の命を守らなければなりません。
「オフィスのフロアでできる地震対策」、「地震発生時の備え」、そして、「地震発生時にすぐに動ける組織」の3つを、それぞれ用意しておきましょう。
オフィスのフロアでできる地震対策
地震によるケガや事故の中で、最も多いものは「家具の転倒によるもの」と言われています。
オフィス内の家具や設備が転倒すると、本体が破損してしまうだけでなく、倒れてきた大きな棚でケガをしたり、重たい家具で避難経路が塞がれたりと、多くの二次災害を引き起こす恐れがあります。
家具を床や壁と固定する
背の高いオフィス家具は、転倒しないように、固定用アイテムで壁や天井に固定しておきましょう。
重い家具やローパーテーションは金具で床に固定し、大きなホワイトボードや壁掛け式の家具は、セルフDIYではなく、オフィス内装工事の専門業者に依頼して、しっかり壁に固定しておきましょう。
また、オフィス家具の上には、物を置き過ぎないようにしておきましょう。せっかく家具を固定していても、重たい金庫や棚をその上に載せていては、地震の揺れで落下してしまう恐れがあります。
二次災害が起きないレイアウトづくり
どんなに固定していても、強い揺れで、家具がひとつも転倒しないとは言い切れません。
出入り口や窓の近くなど、避難経路になる箇所や、従業員のデスクの真後ろなどには、重くて動かせない家具や、倒れやすい大きな家具などを置かないレイアウトにしておきましょう。
また、オフィス内にあるガラス製品の取り扱いにも注意が必要です。
窓の近くに重い家具を置くと、倒れて窓ガラスを突き破り、オフィスの外に落下してしまう恐れがあります。さらに、ガラス付きの家具が倒れると、ガラスが割れて周辺に飛散する恐れがあります。ガラス付きの家具は、オフィスの中央や出入り口付近に置かないようにするとともに、ガラス部分には、飛散防止フィルムを貼っておきましょう。
デスク周りを常に安全に
地震発生時は、ほとんどの従業員がデスクの周りで過ごしていると考えられます。そのため、パソコンの周辺に物やガラスが散乱してしまうと、従業員は逃げ道を塞がれてしまう恐れがあります。
デスクに置かれているパソコンのディスプレイが固定されていること、キャビネットの引き出しが勝手に開かないこと、デスクの回りに余計な私物などが置かれていないことなどをチェックしておく必要があります。
地震発生時でも機能する組織作り
オフィス内が安全でも、従業員の統制が取れていなければ、安全に身を守ることができません。
急な大地震が発生しても、避難や安全確認がスムーズに行えるよう、避難経路や緊急連絡手段などを、マニュアルで共有しておきましょう。
避難経路の確認
建築基準法では、廊下の幅を1.2mから1.6m確保するよう定められています。そのため、避難経路となる廊下の幅は、最低でも1.2m以上確保しておく必要があります。
廊下の幅が1.2mよりも狭いと、大人2人がギリギリすれ違える程度になり、急いで移動している時は、肩がぶつかったり脚がもつれたりして、転倒する恐れがあります。さらに、最悪の場合、大勢が一斉に転倒して避難経路を塞いでしまい、より被害が広がってしまうことも考えられます。
廊下幅が狭いオフィスでは、通路の脇に家具や設備を置き過ぎないよう、注意しなければなりません。
緊急時のマニュアルを共有する
避難経路や連絡手段、災害キットが整っていても、置き場所や使用方法を周知しておかなければ、地震発生時に役立てることができません。
緊急時の対応や行動をまとめたマニュアルを作成し、従業員全員で共有しておくと良いでしょう。
連絡網の作成は慎重に
個人の携帯電話番号を載せた連絡網は、個人情報保護の観点からもおすすめはできません。そのため、緊急時の連絡は、IDを使って連絡を取り合うグループチャットサービスや、全従業員がアドレスを共有している、社内メール等が望ましいでしょう。
定期的に緊急連絡のテストを行い、従業員全員が、問題なく連絡を受け取れることを確認しておきましょう。
地震発生時の備えを用意しておく
命に別状はなくても、地震発生後の備えが確保されていなければ、復旧するまで辛い思いをして過ごさなければなりません。
災害キットを用意する
大きな地震が発生すると、電気や水道といったインフラ設備や、公共交通機関がマヒする可能性も大いに考えられます。あるいは、玄関がオートロックのオフィスでは、停電により一時的に建物に閉じ込められてしまう恐れもあります。
そのため、帰宅できなくなった従業員や、長時間オフィスで待機することになった従業員のために、ヘルメットや懐中電灯、非常食、飲料水、AEDなどの防災グッズや災害キットは、一通り揃えておくと良いでしょう。
日頃から災害に備えて行動する4>
個々のパソコンに重要なデータを分散させると、どれかが故障した時に、取り返しがつかなくなってしまいます。そのため、大元のデータは1つのデータベースで保管し、万が一に備えて、USBメモリ等の外部保存媒体にバックアップを取っておきましょう。
バックアップデータは定期的に更新し、地震発生時の混乱に乗じて盗難されないよう、金庫等で保管しておくことをおすすめします。
まとめ
オフィスの地震対策は、何よりもまず、従業員の身の安全を守る視点で考える必要があります。従業員がケガをしたり、避難が遅れたりするようなオフィスレイアウトになっていないか、万が一の時に従業員と連絡を取る手段は確保されているか、従業員と直接打ち合わせて確認しておきましょう。
また、せっかく地震の発生に備えても、その備えが機能しなければ意味がありません。必要に応じて、地震対策に特化したオフィスレイアウトや、家具の固定方法などを知っている、専門家の意見を取り入れたオフィスの内装リフォームも検討すると良いでしょう。