事業を開始してまもない頃は、会社としての知名度や実績も低いため、不便な思いをすることもあるでしょう。
銀行からの融資や大手メーカーとの取引など、仕事に直接関係することなどは、事業が軌道に乗ってくれば、次第に解決の兆しが見えてきます。
しかし、経営者であるご自身の生活に関わることとなれば、事業が安定しているかどうかに関わらず、問題が発生する前に手を打っておかなければなりません。
ここでは、独立開業する前に、経営者として済ませておきたい3つの手続についてご紹介します。
クレジットカードを作成しておく
ネットでの買い物で便利なクレジットカードは、公共料金の支払いにも使うことができます。特に、開業直後は、何かと大きな買い物も多く、急に高額な出費が発生した時は、クレジットカードで一時的に支払いを済ませることも可能です。
しかし、独立開業直後にクレジットカードを新たに作成しようとすると、審査が不利になる恐れがあります。
独立間もないと不利になる理由
クレジットカードの審査では、申込者の返済能力が慎重に審査されます。
毎月定額の収入が確保されている会社員に比べると、収入が一定ではない個人事業主は、クレジットカードの審査に通りにくいというのが通説です。まして、開業して日が浅く、安定した収入が確保できるかどうかわからない個人事業主ともなれば、審査が厳しくなってしまうのは言うまでもありません。
会社員から個人事業主への独立を検討している人は、できるだけ収入が安定しているタイミングで、クレジットカードを一枚作っておくと良いでしょう。
法人カードの審査はより厳しくなる
個人事業主であれば、事業用の支払いを管理するために、法人カードを作ることもできます。既に所有している個人用のクレジットカードとは別に、事業用のカードを作ることで、プライベートと事業の支払いを分けることができます。
ただし、法人カードの作成は、個人用よりも厳しい審査条件をクリアしなければなりません。事業情報と結びつけて発行することになりますので、当然、収益が安定していること、開業から数年経過していることなど、事業が安定していることが審査条件となります。
個人用カード・法人カードはどちらも、開業直後は作成が難しいと考えておきましょう。
家や車のローンを組んでおく
クレジットカードの審査と、ローンの審査は、審査項目が非常に似ています。
個人事業主になった後ではローンが組みにくくなるため、住宅や車など高額な買い物は、計画的に済ませておく必要があります。
住宅ローンは複数の商品を比較する
新築・中古に関わらず、住宅というものは、現金で買えるような値段ではありません。そのため、約8割近くの人が、住宅ローンを利用します。
そのため、ほとんどの不動産業者やハウスメーカーは、住宅の購入希望者が現れた時は、真っ先に「収入」と「職業」を確認します。せっかく長時間かけて営業トークを行っても、購入者に安定した収入がなければ、金融機関のローンに通らず、結局家を建てられなくなってしまうためです。
もちろん、自営業でも、長期間継続して安定した収入を得ることができていれば、ローンを利用することは可能です。ただし、融資額が少なく設定されてしまうケースもあり、その場合は、手持ちの資金で住宅の購入額を補わなくてはなりません。
また、住宅ローン商品によっては、自営業であることや、事業の継続年数が審査に影響しないものもあります。現在の状態で借入が可能な、複数のローン商品を比較してくれる不動産業者に相談すると良いでしょう。
ローンの二重利用に注意
ひとつのローンを組んでいる状態で、別のローンを申し込むと、審査で拒否される確率が高くなります。例えば、収入が安定しているにも関わらず、高額な自動車ローンの返済額が残っていたばかりに、住宅ローンの審査が拒否されてしまったというケースも少なくはありません。しかし、お子さんの誕生や生活スタイルの変化などが理由で、住宅と自動車は、購入するタイミングが重なることも大いに考えられます。
そのため、独立開業は、生活スタイルの変化をある程度予測したうえで踏み切らなければなりません。
事業用の設備は初期費用に含めておく
また、事業によってはハイスペックなパソコンの購入を余儀なくされることもあるでしょう。
パソコンなどの高額な家電製品も、家電量販店のローンを組むことができますが、こちらも他のローン商品と同様、収入が不安定な個人事業主では拒否されることもあります。
事業に必要な機器や設備を揃えるための資金は、しっかり初期費用の予算の中に含めておきましょう。
自宅の引越しは開業前がベスト
もし、現在のお住まいが賃貸で、引越しを検討している場合も、できるだけ開業前に済ませておくと良いでしょう。
賃貸物件の審査内容
賃貸物件の審査内容も、基本的にはクレジットカードや金融機関のローンと共通しています。
賃貸物件のオーナーは、家賃が唯一の収入源です。もし、その月に1室でも家賃が支払われなければ、収入が数万円減ることになりますので、物件の空き部屋を、確実に家賃を支払ってくれる入居者に使ってもらいたいと考えるのは、当然と言えます。
そのため、前に入居していた物件で家賃の返済が滞っていたり、収入が安定していなかったりすると、入居審査が厳しくなることがあります。
現在のオーナーから物件を紹介してもらう方法
もし、開業直後で収入が安定しておらず、別の物件に引越しできない場合は、現在住んでいる物件のオーナーや仲介業者に相談してみると良いでしょう。
開業後も一定して家賃の支払いが続けられていれば、オーナーや仲介業者が所有する、別の物件を紹介してもらえることがあります。
ただし、引越し先の物件を自宅兼事務所にする場合は、業務内容にもよりますが、入居を断られることもあります。特に、複合機やパソコンのサーバー、その他、大きな音や振動が出る機械を置いたり、来客が頻繁に訪れたりするるような事務所は、近隣トラブルを避けるために、入居を断られる確率が高くなりますので注意が必要です。
おわりに
個人事業主は、クレジットカードやローン、賃貸の申し込みで、大きく不利になってしまいますので、これらの申し込みはできるだけ、独立前に済ませておきたいものです。
しかし、うまく開業前や開業直後に無事に審査が通っても、事業の経営が悪化して収入が不安定になり、クレジットカードやローン、家賃などの様々な支払いが滞ってしまっては本末転倒です。
ローンの利用や引越しの予定があれば、開業後も安定して返済できるかどうかも、しっかり計画しておきましょう。