猫カフェやメイドカフェなど、特定の題材に特化したコンセプトカフェは、今や全国で続々とオープンしています。
この記事では、人気のコンセプトカフェに欠かせない店舗デザインのポイントや、コンセプトカフェを開く前に知っておきたい「知的財産権」に関する基礎知識などを解説します。
そもそもコンセプトカフェってどんなカフェ?
コンセプトカフェとは、メニューやサービス、店舗デザインが、特定のテーマに特化して考えられたカフェのことです。
具体例を挙げると、
● 動物カフェ(猫カフェ、うさぎカフェ、爬虫類カフェなど)
● メイドカフェ
● アニメやゲーム作品のカフェ
● キャラクターカフェ
● 鉄道カフェ
● 忍者カフェ
など、コンセプトカフェの例は枚挙に暇がありません。
店舗デザインを考える時の「コンセプト」との違い
店舗デザインを考える時の「コンセプト」と、コンセプトカフェの「コンセプト」には、意味にわずかな違いがあります。
店舗をデザインする時に必要な「コンセプト」とは、「開業するお店がどんなサービスを提供し、サービスによってお客さんがどんな体験を得られるのか」のことです。
一方、コンセプトカフェにおける「コンセプト」は、メイドや動物、鉄道といった特定の題材を意味します。もちろん、コンセプトカフェでも店舗デザインの方向性となるコンセプトは別途考えなくてはなりません。
コンセプトカフェ経営で失敗しないための店舗・内装デザイン
コンセプトカフェは、ただ題材を取り扱っているだけで成功するものではありません。
取り扱う題材の動向をよく研究し、お客さんが心から楽しめるような店舗・内装デザインを考えましょう。
取り扱っている題材がわかるデザインを重視する
コンセプトカフェの店舗デザインは、「特定の題材を取り扱っていること」をお客さんに伝えられるデザインが不可欠です。併せて、他店とのデザインの差別化や、ポップやスタイリッシュといったデザインの流行りも取り入れなければなりません。
題材の表現、差別化、流行りの3点を、バランスよく取り入れてデザインすることを意識しましょう。
題材を心から楽しんでもらうための動線を考える
せっかくコンセプトカフェに行っても、以下のような状態では、お客さんは店内で楽しく過ごせません。
● 座席の配置が悪くてショーや展示が見えづらい
● 商品がネット上の写真と違い過ぎる
● 通路が混雑してサービスが遅れる
お客さんと従業員がスムーズに行き来できて、サービスの質が落ちないような、効率の良い動線を確保しましょう。
ファンの心理をリサーチする
コンセプトカフェ利用者の多くは、コンセプトとなる題材の熱心なファンですので、題材に対する「お店の理解度」を注意深くチェックしています。
もし題材への理解が足りず、展示物や商品をずさんに扱ったり、ファンを悲しませるような中途半端な店舗デザインを行ったりすれば、最悪の場合、ファンの怒りを買ってしまいかねません。
コンセプトとなる題材について研究することはもちろん、ファン心理をSNSなどでしっかり分析して、ファンに満足してもらえるコンセプトカフェを目指しましょう。
コンセプトカフェの店舗デザインで忘れてはならない知的財産権
特定の題材を取り扱うコンセプトカフェにおいて、店舗デザインを考える時は、他人の知的財産権を侵害しないよう留意しなくてはなりません。
知的財産権とは
知的財産権とは、創作物や事業活動を生み出した人に与えられる権利の総称です。知的財産権のうち、店舗デザインと関わりが深い権利としては以下のような種類があります。
【産業財産権】
● 特許権:発明や製造方法などを保護する権利
● 実用新案権:商品の形状や構造を保護する権利
● 意匠権:物の意匠(形、色、模様といったデザイン)を保護する権利
● 商標権:商品等に付けられた名前やマークを保護する権利
【著作権】
芸術作品等の創作物を、創作者以外が無断で使用・改変できない権利
【不正競争防止法】
健全な市場競争を妨げるような、「不正な競争」を防止する法律。
不正な競争の例:
● 既存商品の名称やデザインの模倣
● 既存商品の類似品を製造して販売すること
● 競争相手の信用を侵害する行為
など
店舗デザインが権利侵害になってしまうケース
まず大前提として、特定の団体や作品が使っているロゴやイラストを、店舗デザインにそのまま使うことはできません。もし行った場合は、著作権侵害や商標権侵害に該当し罰せられます。
また、ご自身でオリジナルの店舗デザインを考えても、既存店舗のデザインや名称と偶然似てしまうケースもないとは言い切れません。
万が一、商標登録されている商品や名称を偶然使用してしまうと、悪意がなくても「商標権侵害」に該当してしまい、権利者から訴えられる恐れがあります。
権利侵害になるかどうかの線引きについて
もし権利者からデザインを訴えられても、こちら側のデザインが以下に該当する場合は、権利者側の訴えが却下されることもあります。
● ありふれた表現
● 明らかな模倣や複製といった、悪質性のあるデザインではない
例えば、牛乳を持った牛や魚を加えた猫などは、題材に対し誰もが思いつくような構図や表現ですので権利侵害とはみなされないかもしれません。
しかし、牛乳瓶のラベルや猫の服装、造形のフォルム等が、独自性のある既存デザインを明らかに模倣していた場合は、悪質性があると判断されるでしょう。
コンセプトカフェの店舗デザインが権利侵害にならないために
権利侵害のトラブルに巻き込まれると、たとえこちら側に非がなくても、店舗の信用に大きく影響します。
「こんなコンセプトカフェを開きたい」と考えた時点で、以下の点を調べて、知的財産権の侵害と誤解されるデザインを作らないように注意しましょう。
● 既存店舗の店名、ロゴ、イメージキャラクター、コーポレートカラー、キャッチフレーズ
● 既存店舗の店名やロゴ、キャラクターの商標登録状況
● 既存店舗のサービス、商品陳列、制服の特徴
など
おわりに
コンセプトカフェは特定のテーマに特化している分、店舗デザインの方向性や権利関係を特に明確にしなければなりません。
題材について研究し、店舗や内装デザインに必要な色や素材、メニューを考え、訪れるファンに長く愛されるようなコンセプトカフェをデザインしましょう。