会社を退職した後もらえる「失業保険」は、次の仕事が見つかるまでの間、生活を支えてくれる頼もしい収入源です。
しかし、失業保険を受け取るためにはハローワークで所定の手続きを踏まなければならず、さらに給付されるまでには7日間の待期期間が発生し、自己都合退職の場合は3カ月の給付制限が発生します。
もらえたはずの失業保険を逃してしまわないように、雇用保険の失業手当を受給するまでの流れや、自己都合退職でも制限を待たずに手当が受け取れるケースなどを知っておきましょう。
退職後に給付される失業保険とは
失業保険とは、会社を退職して新しい仕事が見つかるまでのあいだ、最低限の生活をするために給付される手当のことです。
失業保険は「雇用保険」の中の「基本手当」という位置づけになります。
失業保険手当を受けるためには、以前の会社の雇用保険に、31日以上の雇用または雇用見込みがあり、かつ週20時間以上働いていることが条件です。
雇用保険は事業所の加入義務
どんな会社でも、一人でも労働者を雇っていれば労働者を雇用保険に加入させる義務があります。
会社は、労働者を雇用した翌月の10日までにハローワークで「雇用保険の届出」を行います。
もし届出が遅れた場合は「6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」という厳しい処分が待っています。
また、労働者を雇用保険に加入させた会社は、労働保険料を納付する義務も発生します。
失業保険には退職後すぐには支給されない
失業保険は退職の翌日からすぐにもらえるわけではありません。
失業手当を受けるための手順は以下の通りです。
1. 前の会社から離職証明書を受け取る
2. ハローワークに前の会社の離職票を提出し、求職の申し込みを行う
3. 7日間の待期期間
4. 「雇用保険説明会」に参加する
5. 「失業認定日」にハローワークに赴き、失業認定を受ける
6. 5営業日後に手当が振り込まれる
7. 以降、退職日から1年間、4週間ごとに失業認定を受けるたびに、手当が振り込まれる
3の「7日間の待期期間」は、いかなる理由の退職でも発生します。
もし7日間の待期期間中に収入を得るためにアルバイトなどをしてしまうと、待期期間が延長されて失業保険の振込も延びてしまいますのでご注意ください。
自己都合退職はさらに給付制限が長くなる
会社からの一方的な解雇といった会社都合の退職ではなく、自分で申し出て自己都合退職した場合は、7日間の待期期間後、さらに3カ月間の給付制限がかかります。
もし脱サラして開業する場合は、雇用保険の受給のタイミングを考えて、給付までの生活費を蓄えておかなければなりません。
ただし、7日間の待期期間を過ぎれば、3カ月の給付制限期間中はアルバイトなどをしてもかまいません。
注意点として、アルバイトの勤務時間が週20時間を超えると「雇用保険」の加入条件を満たしてしまい、失業保険が給付されなくなりますので、失業の範囲に留まるよう勤務時間を調整する必要があります。
特定理由離職者は自己都合退職でも給付制限はない
「特定理由離職者」とは、自己都合退職者のうち、やむを得ない理由で退職した人のことです。
自己都合退職でも、特定理由離職者であれば3カ月の給付制限を待つことなく手当が支給され、さらに給付日数が他の退職理由に比べて長くなるなどの優遇措置も用意されています。
特定理由離職者の条件
特定理由離職者の条件は以下の通りです。
1. 労働契約の期間が満了し、かつ更新の旨が記載されており、契約更新を希望したにも関わらず更新されなかった人
2. 以下のような正当な理由で自己都合退職した人
● 疾病や心身の疾患により退職した人
● 妊娠、出産、育児により退職し、失業手当の受給期間の延期を申請した人
● 家族の事情で退職した人
● 配偶者や扶養親族との別居が困難になり退職した人
● 結婚、育児、事業所の移転、通勤用の交通機関の変化、会社都合の転勤の回避などで通勤が困難になり退職した人
自己都合退職の場合3カ月の給付制限がかかってしまうため、ハローワークへの求職申込みを行わず、新しい仕事を見つけた方が早いと判断してしまう方もいます。
しかし、上記の理由による自己都合退職であれば、3カ月の給付期間を待たずに失業保険が給付されますので、給付制限があるからと諦めず、退職理由が特定理由離職者の条件に当てはまらないか必ずチェックしておきましょう。
ただし、特定理由離職者と認められるためには、正当な理由で自己都合退職をしたことをハローワークに証明しなければなりません。
医師の診断書など、できるだけ公的な効力を持つ証明書を準備しておきましょう。
おわりに
失業保険を確実に受け取るためには、前の会社で雇用保険に加入していたことを退職前に確認し、退職後は速やかにハローワークで手続きを済ませ、少しでも長く失業手当が受け取れるように段取りをしておく必要があります。
特定理由離職者の条件を満たせば、自己都合退職でも3カ月の制限を待たずに受給することも可能ですので、自己都合退職だからと早々に諦めず、ご自身がもらえる失業手当をしっかり計算しておきましょう。