会社を退職し、個人事業主として独立を予定している人でも、開業することで「再就職手当」の給付対象者になることができます。
ただし、一般の企業に再就職するときと違って、個人事業主やフリーランスが手当を受け取るためには、通常とは別のやり方で手続きを済ませなくてはなりません。
開業して間もない期間でも、安定した生活を送ることができるように、個人事業主やフリーランスが再就職手当を受けるための方法を知っておきましょう。
失業保険の受取期間中にもらえる再就職手当
失業した人は、雇用保険の被保険者となり、次の仕事に就くまでのあいだ、基本手当を受け取ることができます。
基本手当とは、いわゆる「失業保険」のことです。
もし、基本手当の受け取り期間中に新しい仕事に就いても、「再就職手当」や「就職手当」として、支給残日数に応じて、基本手当から一定額を差し引いた金額を支給してもらえることがあります。
再就職手当は個人事業主でも受け取れる
「再就職」という言葉から、企業などに内定を貰うことが条件のように感じてしまいがちですが、再就職手当は、個人事業主やフリーランスも給付対象になることがあります。
ただし、開業届を提出するタイミングが、再就職手当の支給対象となる日数よりも早すぎると、再就職とみなされず、給付対象から外れてしまうため、注意が必要です。
また、業務を始めて間もないころは、再就職手当の申請に必要な書類を揃えられない恐れもあります。
この点については、後ほど「個人事業主が再就職手当を受け取る時の注意点」で詳しくご説明しますので、まずは再就職手当の基本的な受給条件や内容を知っておきましょう。
再就職手当の受給条件と金額
再就職手当を受けるためには、雇用保険の被保険者になることが第一条件ですが、その点に加えて、ハローワークが求める「再就職」の条件をすべて必要があります。
再就職手当の受給条件一覧
再就職手当を受給するためには、下記の条件をすべて満たさなければなりません。
1.過去3年間で再就職手当を受け取っていない
2.雇用保険の被保険者になっている
3.退職から7日(待機期間)を過ぎた後で、新しい仕事に就いている
4.新しい仕事に就いた日の前日時点で、失業保険の支給残日数が、総給付日数の3分の1以上残っている
5.1年以上働き続ける予定である
6.退職した会社の事業主とは全く関係のない会社に就業している
7.失業保険の手続きを行う前に、内定を受けていない
なお、自己都合で退職した人は、「3.」の7日間の待期期間を終えたあと1カ月間は、ハローワーク等の職業安定書で紹介された会社に就職しなければ、受給の対象外となってしまいます。
再就職手当でもらえる金額
再就職手当の給付額は、基本手当の満額ではなく、支給残日数に応じて一定の割合を差し引いた金額になります。
給付率は、
・所定給付日数が3分の2以上残っている→支給残日数×基本手当の支給残日数の7割
・所定給付日数の3分の1以上残っている→支給残日数×基本手当の支給残日数の6割
で計算されます。
厚生労働省によると、離職した会社の給与が月額15万円の場合は、給付額は月額11万円程度、給与が月額20万円の場合は、給付額は月額13.5万円程度と示されています。
なお、再就職手当の日額は、5,885円という上限が設けられており、60歳以上65歳未満の人は、4,770円が上限となっています。
個人事業主が再就職手当を受け取る時の注意点
個人事業主の場合、「開業届」の提出をもって再就職となりますが、再就職手当を受け取るためには、その他にも条件を満たさなければなりません。
1年間業務が続けられることを証明できるか
個人事業主が再就職手当を受けるために、難関となるのが、「5.1年以上働き続ける予定である」をクリアできるかどうかです。
業務形態にもよりますが、この点に関しては、最寄りのハローワークに、1年以上仕事が受注できるかどうかを認めてもらうことでクリアできます。
事業の内容を証明できるものや業務請負契約書など、ハローワークから指示された書類をすぐに揃えられるように準備しておきましょう。
開業届の提出タイミングに注意
開業届は、退職から7日以内に提出してしまうと、待機期間中の再就職とみなされてしまい、給付の対象外となってしまいます。
また、自己都合で退職をした人は、待期期間のあと1カ月間は、ハローワークなどで紹介された会社に就職しなければ再就職手当の支給対象外となるため、この期間中に開業届を提出してしまうと、給付対象外となってしまいますので、注意が必要です。
さらに、再就職手当を申請するときに、既に開業届を提出している場合は、再就職手当の条件である「7.失業保険の手続きを行う前に、内定を受けていない」を満たせなくなってしまいます。
既に開業届を提出しているのであれば、再就職手当の手続きを行う前に、税務署でいったん「廃業届」を提出しなければなりません。
おわりに
再就職手当は、名前の響きから、個人事業主やフリーランスには無縁な手当のように感じてしまいますが、条件を満たすことができれば受け取ることは可能です。
ただし、開業届の提出や、1年間業務が行えることを証明する書類の準備など、企業への再就職とは異なる手続きも踏まなければなりません。
まずは、最寄りのハローワークに個人事業を開業する旨を伝え、ご自身の、再就職手当の給付に必要な条件を確認してもらいましょう。