住民税や保険料、国民年金などの社会保険料は、いかなる理由があっても、国民の義務として納めなければなりません。
しかし、会社員と違って給与から天引きされることがない個人事業主は、社会保険料の支払いを、自分で工面しなくてはなりません。
特に、開業したばかりで収入が安定しない時は、その支払いが大きな負担となることも考えられます。
万が一、期限までに支払えず慌てないように、各種税金や保険料の減免制度について知っておきましょう。
税金・保険料の減免制度
会社員時代は給与から天引きされていた、各種税金や健康保険料、国民年金は、個人事業主になると、自分で納めるよう手続きしなければなりません。
これらの税金や保険料は、支払い時期の延期や、支払額の減額など、各種の減免制度が用意されています。
ただし、減免制度は自動で適用されるものではなく、自治体の窓口に自ら赴いて、支払いが困難である理由を説明しなければなりません。
住民税の減額制度
住民税は、住んでいる自治体に納める税金です。
前年度の収入にもとづいて納税額が決定し、毎年6月頃に、住民票の住所に納付書が送られてきます。
一年分を一括で支払うこともできますが、4期に分けて分納することも可能です。
住民税は、前年度の収入に対して課せられるという性質上、開業直後の個人事業主にとって、特に負担になりやすい税金です。
住民税の減免条件は、各自治体によって条件が異なりますが、主に、
- 会社都合で失業した人
- 震災や災害で財産を失った人
- 前年度よりも収入が大幅に下がった人
などが理由であれば、減免制度を利用することができます。
減免制度の内容も、自治体ごとに異なっており、4期分の分納金額が、6期分や12期分など、より細かくなったり、納付時期を延長してもらえたりするなど様々ですので、ホームぺージなどに減免制度の記載がなくても、窓口に直接相談してみましょう。
国民健康保険料の減額制度
個人事業主やフリーランスは、国民健康保険に必ず加入しなければなりません。
国民健康保険料も、前年度の所得で金額が決まり、さらに、会社員時代と違って、会社が負担していた分も自分たちで支払うことになるため、年間で納める社会保険料の中でも特に大きな負担となります。
毎年6月頃に納付書が届きますが、口座振替の手続きが住んでいれば、6月末から自動で引き落としが始まります。
国民健康保険の減免制度は主に、
- 前年の世帯所得よりも所得が減った時
- 会社都合で解雇された時
- 災害や病気が理由で所得が減ってしまった時
が対象となります。
いずれも、加入先である自治体の窓口で、離職票など、支払いが困難であることを証明する書類を持参して、申請・手続きを行う必要があります。
国民年金の減額制度
国民年金は、日本に住んでいる20歳から60歳までの人が、必ず加入しなければならない制度です。
会社員の場合は、厚生年金という形で給与から天引きされますが、個人事業主の人は、自分で納めるように手続きしなければなりません。
納付期限は毎月末で、納付書払いや口座振替のほか、クレジットカードによる2年前納なども用意されています。
国民年金も、失業や所得の低下など、経済的な理由により保険料を納められない理由があれば、自治体の窓口、または郵送による申請書の提出で、減免や、納付期間を猶予してもらうことが可能です。
減免額は、全額、半額のほか、4分の3、4分の1などから選べます。
減免した場合は、受給する年金額も減額されてしまいますが、期限内に「追納」の手続きを行うことで、満額に戻すことも可能です。
減免以外には、納付期間を猶予してもらうこともできます。
50歳未満の方で、前年所得が57万円以下であれば、支払い猶予の対象となります。
猶予期間中に支払えなかった保険料は、追納して受給額に加算することができます。追納できる保険料は、追納が承認された月から10年以内のものに限られますので、早めに猶予を終え、追納できるよう調整すると良いでしょう。
未納のままにしておくのは何よりも危険
各種減免制度を利用しても、納付制度そのものがなくなるわけではありません。
また、減免制度を利用した場合、自治体によっては、若干の手数料を追徴されることもあります。
しかし、減免制度で支払い時期をずらしたり、金額を抑えたりすることは、「滞納」の恐ろしいペナルティを避けるという意味でも非常に重要です。
税金滞納に課せられるペナルティ
「数日程度支払いが遅れるくらいなら、減免の手続きをするまでもないだろう」と、支払いや納付を期日までに済ませないと、どんどんペナルティが課されてしまいます。
ペナルティの内容は、数日から1カ月程度の延滞であれば、延滞料の追加で済みます。
しかし、いつまでも支払えずにいると、自治体から督促状や財産の差し押さえ予告所などが届くようになってしまいます。
このように、延滞によるペナルティが発生した事実は、事業の信用情報に大きな傷を付ける恐れがあります。
個人事業主の場合、取引先や銀行から、「税金を支払した会社」というレッテルを貼られてしまい、取引や融資を断られるなど、事業運営が非常に不利になってしまいます。
おわりに
個人事業主になった時、まず初めに行わなければならないことが、税金と保険料の支払い日を最優先にして、月々の収支計画を組むことです。
税金や保険料は、年間の支払い時期と金額が決まっています。そのため、支払い計画さえ最初に立てることができれば、資金不足で慌てる恐れもありません。
しかし、早めに支払い予定を立てていても、急なアクシデントや予定の変更で、収支計画が狂うことも十分に考えられます。
「間に合わない」と気づいた時点で、すぐに減額や猶予の申請が行えるように、市町村の役場を味方につけておきましょう。