個人事業主が避けて通れないものが、年に1度の確定申告です。
確定申告は「e-Tax」を使えば、税務署を訪れなくてもインターネット上で済ませることができます。
ただし、e-Taxはインターネット環境があれば誰でもできると言えるほど簡単なものではなく、使用条件や注意点も潜んでいます。
e-Taxのメリットだけでなく、注意点やデメリットも知っておきましょう。
「e-Tax」を使った確定申告とは
e-Taxとは、国税庁が提供している電子申告ソフトウェアです。
確定申告の方法は、大きく分けると3種類あり、e-Taxはそのうちの一つです。
他の申告方法と比較しながら、e-Taxの特徴を見てみましょう。
確定申告の3つの方法と内容
確定申告は、
● e-Tax
● 税務署に申告書を持参
● 申告書を郵送
のいずれかの方法で行うことができます。
方法 | 特徴 |
---|---|
e-Tax | オンライン上でデータを入力して申告する。 |
税務署に申告書を持参 |
税務署を訪れて申告書を作成し、申告する。 結果的には税務署のパソコンでe-Taxにデータを入力する流れになる。 |
申告書を郵送 | 申告書をダウンロード、または確定申告ソフトなどを使って自宅で作成し、郵送で提出する。 |
上記のように、e-Taxは最も時間と手間がかからない申告方法です。
ただし、事業形態や所得の種類によっては、e-Taxを使った方が手間になるケースも考えられます。
必ずメリットとデメリットを比較し、他の方法よりも利点が多いと思えた時に選びましょう。
e-Taxで確定申告するメリット
e-Taxのメリットは、何といっても時間と場所を選ばずに申告できることです。
ネット上で確定申告が完結
確定申告期間中の税務署は多くの人で混雑するため、申告のために数時間待ちになっても不思議ではありません。
しかし、自宅にインターネット環境がある人なら、家から出ずにe-Taxだけで確定申告が完了します。
また、もし税務署に着いて忘れ物や不備があると申告できなくなり、せっかく税務署まで行った時間が無駄になってしまいます。
しかしe-Taxであれば、自宅で必要書類を揃えながら入力を進めることが可能です。
さらに、e-Taxは確定申告期間中であれば、メンテナンス時間を除いて24時間いつでも申告が可能です。
昼間になかなか税務署に行けないという人でも安心です。
書類の提出が省略できる
確定申告では、必要に応じて生命保険や社会保険といった所得控除のための書類を求められます。
郵送や窓口で申告する場合は、指定の様式に必要書類を貼り付けなくてはなりません。
しかしe-Taxであれば書類を添付しなくても、書類の内容を画面に入力するだけで手続きが完了します。
ただし提出しなかった書類でも、5年間は手元に保管しておく義務がありますのでご注意ください。
e-Taxで添付が省略できる書類一覧はこちら
(国税庁:所得税の確定申告期によくある質問 より)
e-Taxの控えが収入証明になる
引っ越しやローンの申込みなどで収入を証明する際、税務署で前年度の収入を証明する書類を発行してもらうことができます。
しかし、確定申告期間の後は2~3カ月ほど集計期間に入るため、その間は発行できません。
このようなとき代わりに収入の証明となるのが、e-Taxで作った確定申告の控えです。
e-Taxで作成した確定申告書の控えは公的な収入証明とみなされることがありますので、万が一納税証明書が発行できない期間でも、引っ越しやローン審査を進めることができます。
e-Taxで確定申告することのデメリット
e-Taxで確定申告を行うためには、一定の準備と会計の知識が必要です。
準備に手間がかかる
e-Taxで申告するためには、「ICカードリーダー」をご自身で購入しなければなりません。
カードリーダーは一台4千円ほどしますので、これが事実上e-Taxを利用するための料金となります。
カードリーダーは一度購入してしまえば翌年も同じものが使えますので、今後もe-Taxで確定申告を続けたいという個人事業主の方にはおすすめです。
しかし、「たまたま今回だけ確定申告が必要になった」という人の場合、購入するメリットはあまりないかもしれません。
その他、個人情報の登録やマイナンバーカードの発行なども利用前に必要です。
申告期限の直前になってe-Taxによる申告を開始しようとすると、準備だけで思わぬ時間がかかって間に合わない可能性もありますので、できるだけ早めに着手しましょう。
ある程度の会計知識が必要
残念ながら、e-Taxの利用画面は「誰でも簡単に入力できる」と言えるものではありません。
専門用語が並ぶ入力画面の中で、どこに何を入力したら良いかは自分で調べて判断しなくてはなりません。
氏名や住所といった必須項目は入力しなければ先へ進めませんが、人によって入力の有無が分かれる項目を見落とすと危険です。
所得から控除される金額や源泉徴収された金額、経費などは、入力していない場合は「申告がないもの」とみなされてしまい、誰からも指摘されないまま誤った申告書ができてしまいます。
確定申告期間中は税務署が相談会を開催していますので、初年度はこのようなサービスを利用して確定申告を行うと良いでしょう。
一度申請してしまえば、翌年の申告からは前年度の申告書の控えを参考にできますので、e-Taxへの入力も少しだけ行いやすくなります。
おわりに
e-Taxを使えば、税務署に行く手間をかけずに、自宅からいつでも確定申告を済ませることができます。
ただし画面の入力自体は自分自身で行わなければなりませんので、ある程度の税務や会計の知識がないと非常に時間がかかってしまうかもしれません。
e-Taxによる申告が、郵送や税務署の窓口よりもメリットが多いと感じたら、申告期間前に準備に取り掛かり、余裕を持って申告に進みましょう。