中で過ごす人の健康を第一に考えて建材を選ぶことは、もはや建物づくりの基本と言っても過言ではないでしょう。そんな中、特に人気を集めているのが、漆喰や珪藻土などの自然素材です。
この記事では、自然素材が人体にとって良いとされる理由や、店舗の内装に使ったときのメリットなどと併せて、人気の自然素材の特徴を5つご紹介します。
自然素材のメリット
自然素材とは、木や土など、自然から採れる物質を使って作られた、クリーンな建材のことです。
シックハウス対策として注目
シックハウス症候群とは、建物に含まれる化学物質が原因で起こる、様々な疾患の総称です。
シックハウス症候群の症状の例には、めまいや吐き気、頭痛や目の痛み、のどや肺の息苦しさ、湿疹、皮膚炎などがありますが、これらの症状が複数同時に発症することもあります。
化学物質の含有量が少なく、ほぼ天然の物質から作られている自然素材は、シックハウスを防ぐための建材として注目されるようになりました。
素材そのものが持つ力
自然素材は、物質それぞれが持つ性質や特徴を利用して様々な効果を発揮するため、化学物質でその効果を高める必要がありません。
そのため、「クリーンな建材で子どもが安全に過ごせるマイホームを建てたい」、「自然の恵みを身近に感じられる店舗デザインを作りたい」という方におすすめです。
自然素材の種類と特徴
代表的な自然素材は、「漆喰(しっくい)」「珪藻土(けいそうど)」「無垢材(むくざい)」の3種類です。
そのほか、セルロースファイバーや、テラコッタタイルなども、選ばれることが多い人気の自然素材です。
漆喰
漆喰と人の関わりは非常に古く、古代ギリシャ時代では既に漆喰が建築に使われていました。日本でも江戸時代以前から漆喰が登場しており、漆喰が使われた代表的な建築物には、国宝や世界遺産にも登録された「姫路城」などがあります。
漆喰は、屋外の外壁だけでなく屋内の壁の仕上げ材としても使用することができます。
漆喰の優れた特徴の1つに、「調湿性能」というものがあります。調湿とは文字通り、湿度を調整するはたらきのことです。空気中の湿度が高くなると、しっくいが湿気を吸収し、反対に湿度が低くなって部屋の中が乾燥してくると、今度はしっくいの中の水分を室内に届けます。
また、常に内部に湿気を貯めているため、火が燃え広がりにくく、さらに、臭いや大気汚染物質を吸収し、分解する力も備えています。
珪藻土
珪藻土とは、珪藻と呼ばれる植物プランクトンの死骸が化石になったもので、採取したばかりのものは粘土のようにどろどろしています。これに凝固剤を加えることで、建材として使用できるようになります。
ミクロレベルの無数の孔を持つ珪藻土は、その構造によって調湿作用や断熱効果、吸臭や吸音といった様々な効果も発揮することができます。また、珪藻土は漆喰よりも高い調湿性能を持っているため、カビやダニなど、湿気を好む菌や害虫の発生を抑える効果もあります。
無垢材
無垢材とは、天然の木を1本まるごと使って作られた木材のことです。木をまるごと使うため、複数の木材を接着して作る集成材のように、接着剤に含まれている化学物質を恐れる心配もありません。
無垢材も漆喰や珪藻土のように、調湿作用を持つ自然素材です。また、木材独特の柔らかさと香りがリラックス効果を与え、手で触れても熱移動が少ないため、素足で触れてもひんやりと感じにくい過ごしやすい空間を作ることができます。
セルロースファイバー
セルロースファイバーとは、天然の木で作られた繊維のことで、建物の断熱に大きな効果を発揮します。
繊維系の建材には他にも、ガラス繊維で作られた「グラスウール」や、鉱物でできた「ロックウール」などがあります。しかし、純粋な天然の木で作られているセルロースファイバーは、繊維の太さにばらつきがあるため、それが高い断熱効果や防音効果などを生み出しているという大きな違いがあります。
また、無垢材と同様に空気中の水分を調湿する効果も持っていますので、断熱効果で部屋の温かい空気を逃げにくくしながら、調湿効果で湿度は一定に保つという、バランスの良い性能を持っています。
テラコッタタイル
テラコッタとは、粘土を焼いて作る素材のことで、テラコッタタイルはこのテラコッタの持つあたたかみと性能を利用したタイルのことです。
土の温かい質感が特徴的で、一枚ずつわずかに形や色も異なるテラコッタは、店舗の内装に取り入れることで、人工のタイルでは表現できない、洋風のアンティークな雰囲気を作ることができるでしょう。
また、光を反射しにくいため、石材や化粧シートで作られたのタイル材のように、テラスなど日差しが強い場所に設置しても、眩しさを感じにくいという特徴があります。
注意点として、テラコッタタイルは水を吸収しやすく、泥水やジュースなどをこぼすと、早めに取り除かなければ除去できなくなってしまう恐れがあるため、汚れやすい場所の設置は避けておいた方が良いでしょう。
おわりに
自然素材は、どれも素材の強さや性質が建材の特徴になっており、人が側で長時間過ごしても害が低いため、安心して使うことができます。
全体的な共通点として、傷が付きやすく、色や形が不揃いになりやすいというデメリットもありますが、傷や色あせが年数の経過と共にヴィンテージ感を生み出す点も、自然素材が持つ魅力の1つと言えるでしょう。