店舗の内装工事にかかった費用は、経費に計上することが可能です。ただし、内装工事は減価償却しなければなりません。減価償却をするときは、耐用年数に応じて適切な方法で償却することが大切です。間違った方法で償却すると税務署からお尋ねの連絡がくる可能性があります。ここでは、店舗内装の減価償却にまつわる耐用年数と注意点について詳しくご紹介します。
内装の耐用年数はどれくらいなのか?
減価償却の対象となる減価償却資産は、その種類によって耐用年数が異なります。耐用年数は、「減価償却資産が品質を維持できる期間」のことです。国税庁のホームページに掲載されている耐用年数表を参考に、耐用年数を確認していきましょう。
耐用年数表には、「構造・用途」と「細目」、「耐用年数」が設定されています。例えば、木造・合成樹脂造のもので飲食店用に関しては耐用年数が24年です。同じく飲食店用のもので木骨モルタル造のものは19年と短くなっています。これは、木骨モルタル造のものと比べて木造・合成樹脂造の方が耐久性が高いためです。
これが鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のものになると、31~50年、れんが造・石造・ブロック造のものは30~41年、金属造は用途とサイズによって異なり、15~38年になります。
耐用年数と減価償却の関係
それでは、耐用年数と減価償却の関係について、詳しくみていきましょう。
減価償却とは
減価償却とは、高額かつ長期的な使用を見込めるものを「減価償却資産」として、価値が年々減っていくことを踏まえて経費に計上する方法です。通常、その年に購入したものは経費として一括で計上します。減価償却では、耐用年数に応じて毎年少しずつ経費に計上していくことが特徴です。
減価償却の計算方法
減価償却の計算方法には定額法と低率法がありますが、建物に関しては定額法のみが認められています。定額法は、毎年一定額を均等に償却する方法です。例えば、内装工事費が1,000万円で耐用年数が10年の場合は、毎年100万円ずつ経費に計上します。
もし、初年度で1,000万円もの経費を計上してしまうと、赤字になる可能性があります。赤字になると、金融機関からの新たな借り入れ審査に通過しにくくなるでしょう。また、正確な売上を把握することも困難になります。
毎年、100万円ずつ償却することで、節税効果を得られます。減価償却のルールと耐用年数を確認して、正しい方法で償却しましょう。
減価償却のルールと一緒に、平均費用や予算についても事前に確認しておくと失敗がありません。
こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
店舗デザインとは?完成までの道のりや平均費用、予算の考え方を徹底紹介します
減価償却に含まれるもの・含まれないもの
減価償却に含まれるものは、店舗の内装工事費やデザイン費などです。そのほか、レジや什器などのうち10万円を超えるものは減価償却をする必要があります。99,999円以下のものは、減価償却ができません。食材や商品、電球、掛け時計などは、10万円を超えないケースが少なくないため、誤って減価償却しないように注意が必要です。
減価償却時、ここだけは注意しよう!
それでは、減価償却のときに注意したいポイントを3つご紹介します。
店舗簡易装備と建物附属設備は耐用年数が異なる
減価償却の耐用年数は、店舗簡易装備が3年、建物附属設備は最長15年です。店舗簡易装備には、ルーバーや壁板、比較的簡単に交換できるカウンターなどがあります。また、建物附属設備は、アーケードや日よけ、電気設備、ガス設備などです。
アーケード・日よけの金属製以外のものは8年、蓄電池電源設備は6年で、そのほかの設備は15年のため、間違えないようにしましょう。
減価償却費の記入漏れに注意
確定申告のときは、1年間の決算資料を見ながら確定申告書などに入力しますが、このとき減価償却の入力を忘れないようにしてください。1年目は減価償却について調べることで、忘れることなく記入できるでしょう。しかし、2年目以降は減価償却の存在を忘れる方が少なくありません。修正手続きは可能ですが、手間がかかります。
国税庁の確定申告書作成コーナーを利用すれば、前年分のデータを引き継いで今年度分の確定申告書を作成できるため、減価償却を忘れる心配がなくなるでしょう。
不明点は税理士に確認する
減価償却できないものを減価償却したり、耐用年数の設定を間違えたりすると、税務署からお尋ねの連絡がくる可能性があります。また、結果的に過少申告になれば、過少申告加算税がかかる場合もあるため、減価償却するときは耐用年数や対象品目などを慎重に確認しましょう。
不明点は必ず税理士に確認することが大切です。
おわりに:正しく減価償却することがポイント
減価償却をうまく利用すれば、節税効果を得られます。間違った方法で減価償却をすると、修正申告が必要になるため、事前に不明点を解消したうえで確定申告をしましょう。店舗デザイン会社や施工会社が税に関する相談を受けることは法律で禁じられているため、減価償却に関する不明点は、税理士に確認することが大切です。