伝統的な日本の建築美を残す古民家は、リノベーションすることによって、レトロでおしゃれなカフェとして再利用することができます。
しかし、現代の建築とは勝手が異なる古民家には、メリットと同時にデメリットも存在します。カフェとしてリノベーションする際は、その両方を把握したうえで、物件にとって最も良いプランニングを行いましょう。
今回は、古民家をカフェとしてリノベーションするときの、メリットとデメリットについて、それぞれご紹介します。
古民家カフェの魅力とは?
古民家カフェが人気を集めている理由は、以下の2点です。
古民家とカフェの相性は抜群
その多くが戦前以前に建てられた古民家には、現在の建物では表現できない、レトロさや非日常感が溢れています。
カフェを訪れる人は、料理や飲み物の美味しさだけでなく、やすらぎも求めています。古民家が持つ非日常感は、都会の騒がしさを忘れ、ひとときの安息を得るための最高の演出効果となるでしょう。
建物購入費を節約できる
ほとんどの古民家は、土地・建物ともに割安な価格で販売されていることが多く、新たに建物を新築したり、中古のテナントを探すよりも、物件購入費用をはるかに安く抑えられることがあります。
ただし、古民家の中でも、保存状態が良いものや敷地面積が広いものなどは、通常の中古物件と同等の価格で販売されていることもあるため、注意が必要です。
また、販売価格が安くても、雨漏りや腐食、シロアリやカビによる被害などで、建物の耐久性が著しく落ちている古民家を購入してしまうと、修繕費用で余計に出費が発生してしまう恐れがあります。
古民家をリノベーションしてカフェにするメリット
古民家をカフェにリノベーションするメリットは、主に以下の3つが挙げられるでしょう。
レトロな雰囲気で他のカフェと差別化
古民家カフェの唯一無二の魅力といえば、建物全体が放つレトロな雰囲気です。
新築の建物でレトロな雰囲気を出そうとしても、古民家が持つ年代物の趣までは再現できず、作り物の域を超えることはできません。
天然の木材による不揃いの梁あらわし天井や、貴重な木材を使って建てられた立派な柱、昭和の暮らしを彷彿とさせる広い玄関土間、ゆったり取られた縁側スペース、白しっくいの間仕切り壁など、建物の造りだけでも、カフェに訪れる人を楽しませることができます。
自然と調和する天然素材
古民家には、風や日光、雨や風を合理的に取り入れる工夫があちこちに施されています。
木材や藁、土などを壁や天井に取り入れることで、エアコンがなくても、素材の力で熱や湿気を外に放出できるようになっています。
さらに、これらの天然素材には、化学物質が一切含まれていません。
建物に使われている建材に化学物質が含まれていると、呼吸器系の疾患やめまいなどの、シックハウス症候群を引き起こす恐れがあります。
つまり、古民家は天然素材で作られた、環境にも身体にも優しい建物です。
固定資産税の節約が期待できる
建物の固定資産税は、建物に使われた建材のグレードや、築年数の長さ、建物の面積などで税額が決まります。
平均して、約百年近く築年数が経過している古民家は、固定資産税の評価額も自ずと少額になるため、新築物件や築20年前後の中古物件を購入したときよりも、固定資産税を節約することができます。
また、リノベーションを行って建物を最新の状態にしても、固定資産税の評価額が大幅に上がることはありません。
ただし、リノベーションによって建物全体の性能が大幅にグレードアップした場合や、建物を「増築」した場合などは、固定資産税の評価額が見直され、税額が高くなってしまうため注意が必要です。
古民家をリノベーションしてカフェにするデメリット
現代とは異なる技術で建てられた古民家は、やはり現代の暮らしにそぐわない箇所も存在します。
断熱性・気密性が低い
素材の力や建物の造りによって暑さや寒さに耐えている古民家は、現代の技術で作られた建物に比べると、どうしても断熱性や気密性で劣ってしまいます。
屋内席にも関わらず、暖房の利きが悪かったり、隙間風が吹き込んだりする席では、お客様は飲み物の味よりも不便さの方が記憶に残ってしまいます。
リノベーションの際は、古民家の意匠性を残しつつ、これらの断熱性・気密性の向上にも配慮しなくてはなりません。
古民家独自の耐震性に注意
昭和以前に設計された古民家は、一度も耐震改修が行われず、現行の耐震基準を満たしていないことがあります。
しかし、古民家は現代とは異なる耐震基準で守られており、必ずしも現代の住宅よりも耐震性が劣るわけではありません。
現代の耐震技術が、建材の強さで地震から家を守るのに対し、古民家の耐震技術は、造りのしなやかさで地震を受け流すという違いがあります。
そのため、現行の耐震技術を使って古民家の改修を無理に行うと、建物を大きく作り替えなければならず、費用が高額になるだけでなく、古民家のレトロな雰囲気を損ねてしまう恐れがあります。
この2つの耐震技術の違いをよく区別し、古民家の耐震性能に詳しい業者などに、適切な改修プランを依頼すると良いでしょう。
現代の暮らしに即していない箇所がある
古民家の良さは、何といっても現代の住宅には使われなくなった、昔懐かしい古い造りの数々にあります。
しかし、それらはいずれも、玄関の上がりが高かったり、天井や梁が低かったりと、ユニバーサルデザインとは程遠いものばかりです。あるいは、手すりや柵がないような、危険な階段やロフトなどもあるでしょう。
これらの箇所を残しておくと、お客様がカフェの中で安全に過ごせるどころか、最悪の場合、事故やケガに繋がる恐れもあります。
リノベーションの際は、インテリアとして残してもお客様の安全を損ねないか、予算を投じて改修すべきか、よく検討しましょう。
おわりに
古民家リノベーションで作るカフェは、建物が持つレトロさと、リノベーションによってもたらされる新しさが融合し、多くの人を引き付けるお店となるでしょう。
建物の趣を失わず、いかに現代風に使いやすくアレンジできるかが古民家リノベーションを成功させるポイントです。
耐震性や断熱性など、お客様の安全を守る箇所にはしっかり予算を投じながら、お店のコンセプトに沿ってプランニングを作っていきましょう。