店舗併用住宅とは、店舗と住宅がひとつの建物の中に設けられた住宅のことです。
店舗にも住宅にも、建築する時は一定のルールがありますが、店舗併用住宅の場合、どちらのルールも守らなければなりません。
店舗併用住宅で開業するときに知っておきたい、法律の規制や、家づくりのコツを確認しておきましょう。
店舗併用住宅の基礎知識
店舗併用住宅では、病院や飲食店、理髪店、事務所などを建てることができます。
ちなみに、店舗を持たない住宅専用の建物は、併用住宅と区別して「専用住宅」と呼びます。
店舗併用住宅の形態
店舗併用住宅の形態は様々です。
最も多いパターンとしては、1階と2階でお店と住宅部分を分けているタイプがあります。
あるいは、同じ階の中で間仕切り壁で分けられているものも、店舗併用住宅と呼ぶことができます。
ただし、店舗部分と住宅部分が行き来できる構造になっていなければ、「併用」住宅には該当しません。
行き来できる構造とは、階段やドアなどが、店舗と住宅を繋いでいることです。
店舗併用住宅でお店を開く時の注意点
建物を建てるとき、必ず確認しなければならないのが、
・用途地域
・住宅ローン
・立地
の3つです。
店舗併用住宅を建てるときの、上記3点の注意点とルールを押さえておきましょう。
第1種低層住居専用地域の用途制限
大きな騒音や臭いが発生する工場の真横に、住宅や病院を建てるわけには行きません。
あるいは、小学校や公共施設が並ぶエリアに、柄の悪いお店や大型車が頻繁に行き来する工場を建てると、地域の人々は安心して生活できなくなってしまいます。
このような混乱が起きないように定められたものが、「用途地域」です。
用途地域で制限されている内容
・建物の種類(住宅、工場、店舗など)
・建物の規模(面積や階数など)
・業種の種類(店舗や工場の場合)
住宅は、「工業専用地域」を除く、すべての用途地域に建てることができます。
しかし、店舗併用住宅は、建物の中に「店舗」が含まれるため、店舗の建築が制限されている「第1種低層住居専用地域」には建てることができないため注意が必要です。
ローンの一本化が可能か
住宅の購入資金は、大半の人がローンを組みます。
しかし、店舗併用住宅には「店舗」が含まれますので、通常の住宅ローンを利用できないことがあります。
店舗併用住宅の購入費用を全額住宅ローンの対象にできるかどうかは、各金融機関によります。
例えば、住宅金融支援機構の「フラット35」を利用するためには、店舗部分の床面積が、全体の50%以下でなければなりません。
店舗部分の床面積が、全体の50%を超える場合は、店舗用の「事業用ローン」を、住宅部分とは別途組むことになります。
事業用ローンは、事業計画書の提出が必要になるほか、事業の収益性なども審査対象となり、これから新規で店舗を開こうとする方は審査が厳しくなる恐れがあります。
ローンを一本化するためにも、間取りを決める前に、利用できる住宅ローンの種類を見つけておくことをおすすめします。
店舗と住宅それぞれに適した立地
店舗の売上や客足に最も影響を与える要素といえば、物件の立地です。
店舗併用住宅は、店舗である以上、サービスや業種に適した立地に建てなければなりませんが、その環境が住居にふさわしいかどうかは別途考慮しなければなりません。
例えば、飲食店を開くためには夜でも人通りが多いエリアの方が有利ですが、住環境としては好ましいエリアではない可能性があります。
店舗併用住宅を建てるときは、店舗の集客を重視するか、家族の住環境を重視するか、非常に悩ましいポイントと言えるでしょう。
分からないことは専門家に相談しよう
住宅の購入は、高額な資金が必要になるだけでなく、専門用語が頻出します。
よほど不動産や土地の知識がない限りは、土地浄法を提供してくれる不動産業者や建築士など、専門家のアドバイスを求めましょう。
店舗併用住宅を建てるときの専門家選びのコツ
店舗併用住宅を建てる土地を探すときは、その土地に詳しい不動産業者を見つけると良いでしょう。
店舗の業種に適している土地かどうか、地元での土地売買経験をもとに、最も適したエリアを探してもらうことができます。
また、家を注文する業者の選択肢としては、ハウスメーカーや工務店、建築士などがあります。
業者選びでも、やはり地元の土地に詳しい業者を見つけておくと、用途地域の制限や店舗併用住宅でも使える銀行のローンを教えてもらえることがあります。
さらに、店舗併用住宅の施工経験を持つ業者であれば、より心強くなるでしょう。
物件選びのコツ
店舗併用住宅に限らず、物件選びのときには、午前と午後どちらの顔も確認しておくことがポイントです。
例えば、夜は人通りが多く賑やかな土地でも、午前中はほとんど人通りがないことがあります。
午前と午後の賑わい方の違いは、お店の業種にダイレクトに直結しますので、物件・土地選びでは、時間を替えて最低でも2回は足を運んでおきましょう。
おわりに
店舗併用住宅は、店舗と住宅という、性質が異なる2つの空間が同居する建物です。
用途地域の制限や住宅ローンの利用条件といった、基本的なルールを調べておくことはもちろん、店舗・住宅それぞれにとって最もふさわしい立地を選ぶ必要があります。
地元の土地勘に詳しい専門家を見つけて、店舗としても住宅としてもバランスの取れた立地を見つけていきましょう。