個人事業主は、法人口座を開設できないため、本人名義の銀行口座に振り込んでもらわなければなりません。
しかし、個人事業主でも、「屋号付き口座」を持つことで、プライベートと事業用の入出金を分けることができ、屋号が付くことで、クライアントからの事業の信用度も高まります。
屋号付き口座と通常口座の違いや、開設したときのメリットなどを踏まえて、計6つのメガバンクやネット銀行での、屋号付き口座の開設方法をご紹介します。
屋号付き口座と通常口座の違い
屋号付き口座とは、開業届に記載された「屋号」が、口座名になっている銀行口座です。
通常は、
「屋号名 + 氏名」
のように、屋号名のうしろに個人事業主の本名が付きます。
法人でしか開設できない「法人口座」と区別するために、屋号付き口座を「営業性個人口座」としている銀行もあります。
一方、個人で作る、個人名が口座名になっているものは「通常口座」または「個人口座」と呼ばれます。
屋号付き口座の開設に必要なもの
屋号付き口座の開設は、ネット銀行を除いて、基本的に窓口のみでの受け付けとなります。
開設には、主に以下の物が必要です。
- 「屋号」が記入された開業届
- 印鑑(個人名のものを利用可能)
- 本人確認書類
- 事業内容が確認できる資料(ホームぺージを印刷したものや事業の許認可証など)
提出書類は銀行によって異なりますが、屋号付き口座の開設でほぼ必要になるのが、「屋号」が記載された開業届です。
この開業届に記載された屋号が、口座名に使われます。
開業届の「屋号」を空欄で提出している場合も、後から屋号のみ追加修正が可能です。
なお、本人確認書類のうち、役所で発行する印鑑証明書や納税証明書などは、ほとんどの銀行で「発行から6カ月以内」と期間が指定されていますので、発行するタイミングに注意しましょう。
また、屋号付き口座が開設できる銀行は、事業所に近い支店に限られます。
銀行によって管轄エリアが異なりますので、窓口に向かう前に、電話や銀行のホームぺージでエリアを確認しておきましょう。
個人事業主が屋号付き口座を開設するメリット
個人事業主の場合、クライアントから事業としての信頼を得ることは、何よりも重要です。
屋号付き口座を開設することで、事業としての信用性が高まり、事業関連の入出金をプライベートと分けて管理できるようになるため、記帳作もスムーズになるでしょう。
事業の信用性が高まる
口座に屋号が付いていると、周囲からの事業の信頼度は高くなります。
もし、個人口座に振込依頼をかけた場合、振り込む相手は、
「個人名の口座だけど、事業用の口座は持っていないのかな?」
「他の支払いと、こちらの振込み履歴を区別してもらえるのかな?」
と不安に感じてしまう恐れがあります。
生活用口座と事業用口座を明確に分けられる
納税や買い物など、プライベートの支払いも行う口座と、事業用の口座を一緒にしてしまうと、支払いや入金の管理が煩雑になってしまいます。
毎日マメに帳簿を付けることができれば問題ありませんが、忙しくて帳簿を付ける暇がない時は、過去の明細を遡って経費かプライベートかを判断するのは非常に困難です。
収支を正確に管理するためにも、事業用の入出金は、屋号付き口座でひとまとめにしておくことをおすすめします。
銀行によっては屋号のみでの振り込みも可能
屋号付き口座も、屋号名のうしろに本名を付けなければならないため、そのままでは相手から本名を知られてしまいます。
この時、銀行によっては、窓口で書類手続きを行えば、屋号のみ相手に見えるようにすることも可能です。
ただし、「屋号のみでの口座開設」は、振込詐欺などの犯罪を防止するため、現在ほとんどの銀行で行われていません。
どうしても個人名を伏せたい場合は、必ず、口座開設前に窓口で「屋号のみでも振り込みが可能であること」を確認しておきましょう。
個人事業主が屋号付き口座を開設できる銀行
屋号付き口座は、店舗がある銀行と、ネット銀行どちらでも、開設することができます。
主なメガバンクとネット銀行それぞれの、屋号付き口座を開設する時のポイントを、以下にまとめました。
屋号付き口座を開設できるメガバンク
大手メガバンクのうち、屋号付き口座を開設できるのは、
- 三菱東京UFJ銀行
- 三井住友銀行
- みずほ銀行
- りそな銀行
などです。
このほか、地方銀行や信用金庫でも、屋号付き口座が開設できる所がありますので、地元の付き合いや融資の予定がある場合は、そちらを優先すると良いでしょう。
三井住友銀行
本人確認書類、印鑑、開業届の原本を窓口に持参すれば、最短でその日のうちに屋号付き口座を開設することができます。
りそな銀行
本人確認書類、印鑑、開業届を窓口に持参し、こちらも最短で即日の口座開設が可能です。
みずほ銀行
本人確認書類、印鑑、開業届など事業の内容がわかる書類を、みずほ銀行の窓口に持参し、口座の利用目的をヒヤリングされた後、約1週間程度で審査結果が届きます。
審査完了後、改めて印鑑などを窓口に持参して、口座開設となります。
三菱東京UFJ銀行
税金の納税証明書や商業登記簿謄本など、屋号がわかる書類の原本が必要です。
加えて、口座開設申し込みの6カ月以内に発行された、「住民票の写し(原本)」または「印鑑証明書」や、公共料金の請求書、または領収書、運転免許証または個人番号カードや健康保険証など、複数の書類を揃えて窓口に持参しなければなりません。
屋号付き口座を開設できるネット銀行
ネット銀行では、インターネット上で屋号付き口座の開設を申し込んだあと、本人確認書類を郵送して、審査後に口座開設となります。
書類のやりとりに多少時間を要しますが、窓口まで行く手間が発生しないため、口座開設を急がない方や、すでにネット銀行で個人口座を開設している方におすすめです。
楽天銀行
楽天銀行における屋号付き口座は、「個人ビジネス口座」という取り扱いになります。
個人ビジネス口座の開設は、楽天銀行の個人口座を持っていることが条件です。
まずは、楽天銀行の個人口座ぺージにログインし、個人ビジネス口座開設の申し込みを行います。
その後、楽天銀行から送付された返信用封筒に、開業届など事業内容がわかる書類を同封して返送し、開設準備完了の連絡を待ちます。
なお、楽天銀行では、口座名を「屋号のみ」にすることはできません。
ジャパンネット銀行
銀行ホームぺージにて、屋号付き口座の開設申込後、運転免許証や印鑑証明書原本など、事業を行う個人の本人確認書類を送付する必要があります。
加えて、開業届や確定申告書のほか、許認可証や会社案内パンフレットなども同封しなければなりません。
ただし、ホームぺージに事業内容を載せており、かつ開業後6カ月以上経過している場合は、URLのみで事業内容を証明することが可能です。
おわりに
個人事業主にとって、「事業を安定して運営している」という安心感は、クライアントの信用に大きく結びつきます。
屋号付き口座を用意することができれば、取引先に安心感を与えられ、事業主自身も、入出金管理や記帳作業がスムーズになり、より事業の安定可に繋げることができます。
開設までのやり取りや審査の内容は、銀行や支店、窓口担当者によって異なる場合がありますので、まずは、馴染みのある銀行や、インターネットバンキングやATM手数料が無料になるなど、事業にメリットのある銀行から、屋号付き口座が開設できる所を探してみると良いでしょう。