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おしゃれ、優雅、お客さんとのコミュニケーションが楽しそう、簡単な飲み物と軽食を提供するだけなら自分にもできそう…などのイメージで、カフェ経営に憧れる人は少なくありません。
このように、つい甘くて楽しそうなイメージを持ってしまうカフェですが、「廃業率が高い業種」として知られる飲食店の一種であることを忘れてはいけません。漠然とした憧れだけでカフェを開業し、手痛い失敗を経験する前に、カフェ経営の失敗例と理由を知っておきましょう。
失敗パターン1:カフェ経営の知識不足
「経営の基本を勉強せずにカフェ経営に手を出して失敗した」というパターンは、甘い考えでカフェを開く人に最も多いパターンです。
カフェ開業後の資金を用意しておらず失敗
物件の契約時やお店のリフォーム、設備や家具の購入といった開業時にかかる費用のことを「初期費用(イニシャルコスト)」と言います。一方、開業後にかかる物件の家賃や光熱費、仕入れ代、人件費などは「運営費用(ランニングコスト)」と呼ばれます。
開業のための初期費用に資金を使い果たしてしまい、運営費用が捻出できず閉店…というパターンは飲食店経営について事前に学ばなかった人が特に陥りやすいケースです。家賃や従業員の人件費が月々の売上でまかなえると甘く見積もっていると、自分の手元に入るお金はおろか、月々の支払いも滞って閉店を余儀なくされてしまうでしょう。
開業前に、ランニングコストの支払いも含めた売上目標をしっかり立て、その目標に到達するためのメニュー設定や業務の効率化を考える必要があります。
カフェのメニューを安く設定し過ぎて失敗
「喜んでもらおうと破格の料金設定にしたけど、採算が取れなくなった…」
「開業してみてメニューが安すぎることに気づき、値上げした結果、客足が遠ざかってしまった…」
などのように、値段を安くしたことが原因で失敗したパターンもあります。
安いメニューは確かに喜んでもらえますが、商売である以上、採算が取れなければ経営は続けられません。また、一度決めた料金を後から値上げすると、客足を遠ざける大きな原因になってしまいます。
そのメニューを作るためにかかる材料費は「原価」と呼ばれ、メニューの価格に対する原価の割合は「原価率」と呼ばれます。メニューの価格を安くしすぎると、原価率が高くなり採算が取れなくなってしまいますので、売上目標をしっかり立て、安易な安売りは絶対に避けましょう。
失敗パターン2:カフェ出店地のエリア分析を誤って失敗
立地調査をしない、もしくは調査が甘い状態でカフェを開くのは非常に危険な行為です。出店した立地次第で客層は全く異なります。また、競合店があるかどうかも、自分のお店の集客率に大きく影響してきます。
カフェ出店地のエリア分析でよくある失敗パターン
・車移動する人が多いエリアにも関わらず、お店用の駐車場を確保していなかった
・閑静な住宅街の中に出店したら近隣からクレームが来た
・駅近くの物件を選んだが、メイン通りから一歩外れると全く人通りがなかった
地図には「そのエリアでどのように生活が営まれているか」までは書かれていません。
開業予定地が決まったら、実際に足を運んで周辺の人の暮らしぶりを観察しておきましょう。
失敗パターン3:客層分析の失敗
「こんな人が来てくれるだろう」「こういう人に喜んでもらえるだろう」という勝手なイメージだけで集客できると思い込むのは非常に危険です。
・シニア向けの高級志向のカフェを作ったが、近隣の人はそもそもカフェに行く習慣がなかった
・ターゲットを若い人に絞ってメニューと内装を設定したが、若い人はみんな駅前や商業地のお店を利用してしまう
客層分析を誤ると、上記のような状態に陥り、開業後に大幅な路線変更を余儀なくされかねません。
「喜んでもらえるだろう」という思い込みを捨て、そのエリアに暮らす人がカフェを日常的に利用しているか、そのカフェを開くことが住民にとって良いことになるかを考えることが大切です。
失敗しないカフェは客のためにこだわっている
自分の趣味やこだわりを反映させたお店が持てることもカフェ経営の醍醐味ですが、お客さんに喜んでもらえなければ「こだわり」は「押し付け」になってしまいます。
そもそもお店というものは利用する客がいなければ成り立ちません。店舗づくりで何よりも優先すべきは、「お客さんにとって居心地のいい空間を作ること」です。
似たような雰囲気の競合店を訪問して、そこにいるお客さんは何を目的に訪れているか、どのように楽しんでいるかなどを分析してみると良いでしょう。
失敗を回避して成功しているカフェの特徴は?
ここまで失敗したカフェの特徴をご紹介してきましたが、以下からは、成功しているカフェの特徴もあわせてご紹介します。失敗しているカフェとの違いを比較しながら読んでみると良いでしょう。
常連客だけで成り立っていないカフェは成功している
いつも利用してくれる常連客は、お店の売上を支えてくれる有り難い存在です。しかし、常連客が来なくなると同時にお店の売り上げも減ってしまうため、売上の全てを常連客に頼るのは考えものです。
さらに、いつも常連客が座席を埋め、馴染みのない客をけん制するようなお店だと、初めてお店に来た人は居心地の悪さを感じてしまい、いつまで経ってもリピーターが付きません。
飲食店のレビューサイトで、「常連客にしか丁寧に接客しない」という低評価の口コミを見たことのある方も多いのではないでしょうか。常連客は大切ですが、特別扱いしすぎず一定の距離を確保し、初めて訪れるお客さんも歓迎するお店を作りましょう。
カフェのこだわりと客の需要がマッチしているカフェが理想
「欲しいものが必ずある」という安心感は、お客さんを店舗に惹きつけるパワーとなります。しかし、「メニューの数を増やせば、必ずどれか注文してもらえる」などのように、手当たり次第にメニューを増やすのはマーケティングにおいては逆効果です。
人は、選択肢が多過ぎるとストレスを感じ、「選びたくない」と考えてしまう傾向があります。やみくもにメニューばかり増やしても注文をためらわれ、食材の仕入れ代は増え、使わない食材の廃棄量も増えるという悪循環を生んでしまいます。
お客さんに気に入られているカフェの特徴
お店のこだわりに沿ったメニューが考えられています。こだわりが訪れる客のニーズとマッチするため、常に売上が確保でき、あえてメニューを絞ることが食材のロスとオペレーションの効率化にも繫がっています。
お客さんの需要をピンポイントで突いている例としては、以下のようなお店が挙げられます。
・「テイクアウトできるパンメニューのみ置かれたカフェ」
・「料理はないけど、紅茶の種類が豊富なカフェ」
・「近くの海で獲れる新鮮な魚料理だけを提供するカフェ」
など
大失敗する前にカフェを閉店すべきタイミングは?
もしカフェ経営が上手く行かず、生活すらも危うい状態になった場合は、閉店もやむを得ないでしょう。
大切なお店を手放すのは辛いことですが、タイミングよく閉店に踏み切らなければ、被害はさらに広がってしまいます。いざという時のために、カフェを閉店すべきタイミングもしっかり頭に入れておきましょう。
カフェの赤字が1年以上経っても回復しない時
赤字の状態がいつまでも続き、かつ1年以上たっても回復が見られない場合は、早めに閉店までのスケジュールを計画した方が良いかもしれません。いつか黒字になると夢見て赤字経営を続ければ、損する金額はどんどん膨れ上がり、やがて運転資金が枯渇して生活すらままならなくなる恐れがあります。
必ずしも1年目が正しい閉店のタイミングとは限りませんが、現状の売上等から赤字でいることのできる期間を分析しておきましょう。
メンタル的にカフェ経営を続けられそうにない時
どんなお店でも、ご自身の心身が万全な状態でないと経営は成り立ちません。カフェ経営は根性論だけでは成り立たず、冷静かつ客観的な視点が大切です。
メンタルが万全ではない状態で経営を続けても、赤字や経営難に対する不安や焦りから、不必要な経費を買ったり効果のないサービスを打ち立てたりして、より厳しい状態を自ら招いてしまいます。
カフェ経営が苦しいときは、無理に売上を確保しようとせずいったん休みを取って、焦りや恐怖にとらわれていないか、ご自身の精神状態を客観的に見てみましょう。
カフェの閉店資金が用意できる時
閉店するにも資金が必要です。借りているテナントの原状回復費用や、退去のための家賃清算、設備の処分費用などでも、数十万円の支払いが発生します。
また、役所への廃業届提出や従業員の雇用保険関連の手続きなども、営業を続けながら済ませなければなりません。
もし、閉店を決断した時、すでに借金しなければ生活できないような状態だと、閉店のためにさらに借金を重ねることになってしまいます。
「そろそろ潮時かな」と感じた時は、手持ちの資金だけで閉店できるうちに動き始め、早めに見切りをつけましょう。また、設備や造作を残したまま退去できる「居抜き退去」ができれば、原状回復工事を行わずに済むため、閉店費用を大幅に削減することも可能です。
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おわりに
飲食店経営において、開業はあくまでも手段に過ぎず、安定して継続できるようになってからが本当のスタート地点です。カフェ経営を安定させられるかどうかは、開業前の準備段階でほぼ決まると言っても過言ではありません。
根拠のない自信だけで開業するのは失敗の元です。失敗しているカフェや成功しているカフェの事例を参考に、経営の基本やエリア分析といった必要な準備にしっかり時間をかけ、万一閉店することになった場合のシミュレーションも済ませておきましょう。