「棚卸し」とは、期末時点の在庫の量と金額を調べる業務のことです。
用語自体は聞いたことがあっても、何のために行われているのか、その目的までは把握できていないという方も多いのではないでしょうか。
棚卸しの意味と重要性を理解しておくことは、会社の正しい経営状態を知ることに繋がります。
この記事では、在庫を取り扱う会社で避けては通れない棚卸しについて、目的や進め方などの基本的な知識をご紹介します。
棚卸しは何のために行われるのか
物を売るときは、まずはじめに商品を仕入れます。
そして、売り切れなかった商品は在庫になります。
会社の純粋な売り上げを調べる時は、売上から在庫の数を差し引かなければなりません。
在庫まで売上に含めてしまうと、実際よりも利益が高いという間違ったデータになってしまうからです。
間違ったデータを信じてしまうと、「売上は確かに出ているはずなのに、手持ちの現金が少ない」という状態に陥ってしまいます。
つまり棚卸しは、会社の正しい現状を知るためには欠かせない業務なのです。
棚卸しは決算に関わる重大な業務
在庫の総額を把握しておくことは、正しい決算報告をすることにも繋がります。
会計上の在庫は2種類存在します。
● 期首棚卸高…年度開始時にあった在庫の総額
● 期末棚卸高…年度終了時にあった在庫の総額
最初に手元にあった在庫の総額と、年間の仕入れ総額を合計し、そこから減った在庫の額を差し引くと、「売上原価」が出てきます。
売上原価は会社の純粋な利益を導き出すために不可欠な数字です。
仮に年間の売上が1,000万円だったとしても、それが全額利益になるわけではありません。
商品の仕入れ代、つまり「売上原価」を差し引いた金額が、純粋な「売上総利益」となるのです。
作成した棚卸表は、実施日から7年間は保管しておかなければなりません。
店舗運営における棚卸しの進め方
店舗運営の棚卸しでは、在庫に関する以下の情報を調べていきます。
● 商品名
● 在庫数
● 単体の金額
● 総額
● 価値(不良在庫になっていないかどうか)
在庫が少ないお店であれば棚卸しは半日で終わるかもしれません。
しかし、在庫を大量に抱えているお店では棚卸しを毎月実施していると、お店の運営にも支障が出てしまいます。
そこで活用したいのが、「帳簿棚卸」です。
「実地棚卸」と「帳簿棚卸」によるダブルチェック
「実地棚卸」とは、手作業で在庫の数を数える棚卸しのことです。
一方、「帳簿棚卸」とは帳簿にその都度入庫や出庫を記録して行う棚卸しのことです。
実地棚卸しを毎回行っていると、膨大な手間と時間がかかります。
しかし、帳簿棚卸が毎回行われていれば、時間をかけて全ての在庫を数えなくても、現在の在庫状況を瞬時に把握できます。
ただし、帳簿棚卸はあくまでもデータ上で行うものです。
もし在庫が紛失していたり、不良在庫になって価値が下がったりして、いつの間にか数や状態が変化していても帳簿には反映されません。
よって、実地棚卸と帳簿棚卸はどちらも必要になります。
お店の在庫数に応じて、実地棚卸しを半月や一年に一回、それ以外は帳簿棚卸で完結させるなどすると良いでしょう。
棚卸しによってわかること
棚卸しは決算報告を行うために欠かせない業務ですが、その他にも店舗運営に繋がる重要な意味があります。
売上に対するロスを知ることができる
在庫が多いということは、仕入れた代金が回収できていないということでもあります。
棚卸しで在庫の量と金額を調べることによって、仕入れにかかったお金がどれだけ回収できていないかを計算できるようになります。
無駄な仕入れがなくなる
現在手元にある在庫の量が把握できていれば、二重で同じものを発注するミスもなくなり、無駄な支出を防げるようになります。
また、棚卸しによって在庫の総額がわかると、売上に対する在庫の回転率も把握できるようになります。
在庫回転率が低いということは、在庫の動きが遅いということを意味します。
適正な在庫回転率のもとで、仕入れ量が調節できるようになれば、仕入れにかかるロスを減らせるようになるでしょう。
不良在庫をあぶり出せる
棚卸しをすることによって、データ上ではわからない不良在庫をあぶり出すことができます。
例えば、しばらくは品質が低下しないと見込んでいた資材が、日当たり具合や空調機器の故障などによって、思いがけない速さで劣化していることも考えられるからです。
おわりに
棚卸しは、店舗運営や会社経営において、絶対に避けて通ることはできません。
しかし、実際に行う時は多くの労力と時間がかかってしまいますので、普段からデータ上で在庫の量を把握するなどして、できるだけ手間を減らす工夫が必要です。
棚卸しの目的と重要性を理解して、効率的な在庫管理の方法を確立させましょう。