目次
事務所移転は、固定費の削減や事業拡大、福利厚生面の改善など、企業にとって大きなプラス効果をもたらします。しかし、通常業務も並行して行うことになるため、次々と発生するタスクに追われてしまうと、不要な経費や手間も発生しかねません。この記事では、事務所移転を成功させ、快適なオフィスを手に入れるために必要な手続きや注意点、知っておくと便利なポイントなどを、5つのステップごとにご紹介します。
プロジェクトを立て、必要な手続きをリストアップ
(1)移転先事務所の内覧、契約、移転日の決定
事務所移転は、リーダー・経理担当・庶務担当・工事関連担当から成るプロジェクトチームを立てておくと、各手続きの進捗管理やスケジュール調整がスムーズになります。
各担当の仕事内容の例
- リーダー:全体の計画をまとめる、全体の進捗管理など
- 経理担当:移転の予算を管理、業者への支払い管理など
- 庶務担当:お取引先への移転通知作成、電気・水道・ネット回線などの解約・申し込みなど
- 工事関連担当:工事業者との打ち合わせ、工事スケジュール管理、現場立ち合いなど
(2)移転スケジュールの作成
まずは、現在の事務所が賃貸の場合、申出から何日後に解約が可能かを調べておきましょう。次に、移転に必要な作業をリストアップし、最終的な所要日数を計算します。
(3)お取引先への移転通知の作成開始
重要なお取引先に送る移転通知は、フォーマットや挨拶文の内容など、社内全体で時間をかけて作成しなくてはなりません。移転が決まった時点で、余裕を持って作成に取り掛かりましょう。
移転先の事務所を快適にする手続き
(1)移転先事務所の内覧、契約、移転日の決定
事務所用の物件は、内装の雰囲気だけでなく、外からの見た目も重要です。お取引先やお客様にとって好印象となる建物かどうか、物件周辺の治安と併せて客観的な視点で判断しましょう。他の企業も利用しているビルであれば、その企業の情報や雰囲気、業務内容なども調べておかなくてはなりません。また、トイレの状態や給湯室の広さは、毎日使うオフィスでは重要なポイントです。忘れずにチェックしておきましょう。その他、駐車場の広さや料金、駅やバス停までの距離なども、社員の通勤事情に応じて考慮する必要があります。
(2)移転先事務所のリフォーム
新しい事務所を快適な空間にするうえで欠かせないのが、移転前の入念なレイアウト作成です。社員がストレスを感じない動線づくりや家具の配置だけでなく、緊急時の避難経路もこの時点で必ず確認しておきます。また、作業のやり直しに伴う手間や追加費用を防ぐためにも、必要に応じてオフィスデザインの専門業者を利用し、レイアウトの参考にすると良いでしょう。
リフォーム内容が決定した後は、業者から提示される工期を基に、現在使っている事務所の解約日までに引っ越しが行えるようスケジュールを調整してください。
引っ越し直前から引っ越し当日までの動き
(1)お取引先への移転通知発送
移転通知は、お取引先のスケジュールを考慮して、移転日の1カ月前にお知らせしましょう。
(2)現在の事務所の不用品処分
機密情報の漏洩を防ぐために、不要な書類やCD・DVDなどは、回収業者に依頼して、確実に溶解処理しておきます。
(3)移転先へ運ぶ物の荷造り
デスクやパソコンを荷造りすると、その間、通常業務を行えなくなってしまいます。進行中の業務に差し支えのない範囲で、引っ越し1週間前までに大半の梱包を進めておきましょう。
(4)引っ越し当日
通常業務がストップしてしまう引っ越し当日は、速やかに作業を終わらせなくてはなりません。デスクや家具の位置などは搬入当日までに決めておき、引っ越し当日までにレイアウトを全部署へ配布しておくと、当日の混乱を避ける事ができます。
現在の事務所の原状回復リフォーム
事務所を退去する際は、壁や床、天井の汚れを除去、入居後に追加設置した設備の撤去など、原状回復工事が必要です。原状回復の範囲は物件によって異なりますので、賃貸借契約書などで必ずチェックしておきましょう。また、原状回復はオーナー指定の業者があらかじめ決まっている事があります。指定外業者の使用が許可されても、オーナー側の意図する材質や仕上がりにならなければ、追加工事が発生してしまう事がありますので、オーナー側・工事業者・社員の3者でしっかり打ち合わせを行いましょう。
移転後の手続きや、安全確認まで
(1)移転関連の事務手続き
期間の記載がないものは、移転後速やかに届出が必要です。
- 法務局…移転登記(本店は移転後2週間以内、支店は3週間以内)
- 税務署…給与支払い事務所の移転・廃止届(移転後1カ月以内)、納税地の異動届
- 都道府県税事務所…事業開始申告(移転後10日以内)
- 社会保険事務所…適用事業所の所在変更届(移転後5日以内)
- 職業安定所…雇用保険事業所変更届(移転後10日以内)
- 労働基準監督署…労働保険所在地変更届、事業報告届、協定届、安全管理者責任報告
- 郵便局…転居届
- 消防署…防火管理者選任届
- 警察署…所有車両の車庫証明提出
いずれも期間が短く、社労士や司法書士に委託する場合でも、謄本や議事録の写しなど多くの書類が必要となります。その他、加入している保険や各金融機関の通帳、社判なども住所変更が必要となるため、引っ越し前までに書類の記入や発注を済ませておきましょう。
(2)移転後事務所の確認
無事移転が完了した後は、引っ越しによって破損した設備、紛失した書類、電源の不具合、不足している設備などがないか、必ず確認しておきましょう。
(3)プロジェクトチームの反省会
事務所移転は、今後も発生しないとは限りません。今回の移転に関する反省会をプロジェクトチームで開き、掛かった費用総額や実際に発生したタスクなどを、次の移転に向けてまとめておきましょう。
おわりに
事務所の移転は、長い期間と労力を要する大掛かりな作業ですが、新しく快適な事務所を手に入れた時の達成感は、社員にとってもプロジェクトチームにとっても、かけがえのない喜びとなります。事務所の快適さを左右する、レイアウト作成とリフォームに時間を割くためには、それ以外のタスクを効率良く進めなくてはなりません。ずは通常業務に支障が出ないよう、移転に必要な作業をあらかじめリストアップし、無理のないスケジュールを組んで行きましょう。