飲食店によっては、居心地の良い内装が料理以上に客を惹きつけることもあります。しかし、内装の居心地が良過ぎるために、飲食店の売上維持に欠かせない「回転率」が下がってしまっては本末転倒です。飲食店における回転率の意味や、理想的な回転率の求め方などを知っておきましょう。
飲食店の回転率とは?
「回転率」とは、1つの座席が何回使われたかを示す数値です。座席が20席のお店でその日の来客数が40人なら、2回転したという計算になります。回転率はランチタイムやディナータイムなど時間帯ごとに計算することもあれば、月間の回転率を使うこともあります。
回転率はお店のテイストによって様々
回転率が高いほど沢山の客がお店を利用したことになりますので、売上も高かったと予想できます。しかし、お店の売上が維持できていれば、回転率自体は他店より低くても問題はありません。
例えば、手軽に食事を済ませる人が多いファーストフード店の回転率に比べると、ゆっくり会話や食事を楽しむ高級レストランや料亭などは、当然回転率は低くなります。ところが、高級レストランはファーストフード店よりも客単価が高いため、ファーストフード店より低い回転率で売上目標を維持することが可能です。
お店の居心地を重視し過ぎると回転率が下がる!?
「居心地が良くていつまでもいたくなるお店」という口コミで人気を博しているお店もありますが、居心地が良すぎると回転率が下がり、かえって売上の低下に繋がる恐れがあります。
長居する客が多いと回転率はどんどん下がる
「あのお店はWi-Fiも使えて充電できるから何時間でも過ごせる」「内装がおしゃれなので友達と時間を忘れて夢中でおしゃべりできる」といった長居を前提に利用する人がお店のリピーターになってしまうと、回転率は著しく低下するでしょう。
もちろん、長時間過ごして何回もオーダーを取るコンセプトのお店であれば、内装の居心地の良さがリピーターの獲得に繋がるかもしれません。しかし、座席数が限られている小さなお店や、ランチタイムに多くの人で混雑するようなお店では、長居するリピーターが多いと回転率を大きく下げる要因となってしまいます。
あえて居心地を悪くすることも戦術
回転率を高めるために、あえて内装の居心地を悪くしている飲食店もあります。例えば、数分で食事を済ませて出て行くスタイルの飲食店なら、座り心地のいいソファやおしゃれなテーブルを置いても回転率を下げるだけですので、簡易な座席とカウンター席のみで事足ります。
あるいは、「ランチタイムだけ禁煙にして休憩目的の喫煙者を遠ざける」「料理を提供すると同時に会計の伝票を座席に置く」「食べ終わったお皿をすぐに下げる」といった仕組みで回転率を高めることも可能です。
ただし、回転率を高めようとし過ぎると「客を追い出そうとする失礼なお店」と悪い印象を与えかねませんので、お店の雰囲気に合わせて回転率を高める工夫を取り入れましょう。
自分のお店の理想的な回転率を把握しておこう
お店の回転率は売上目標を達成できるかどうかを左右する重要な数値です。売上目標に対する、理想的な回転率の計算方法を知っておきましょう。
以下からは、下記の条件を前提として理想的な回転率を計算して行きます。
– 月間の売上目標:200万円
– 1日あたりの平均客単価:2,000円
– 総座席数:20席
– 平均客席稼働率:70%
客単価とは、そのお店でお客さん一人あたりが支払う平均金額のことです。客席稼働率とは文字通り、座席がどのくらい使われたかを示す数値です。座席が20個あったとしても、満席時に必ずぴったり20個埋まるわけではなく、2人掛けの座席に一人で座ることもありますので、客席稼働率は、「満席時の人数÷すべての座席数」で計算します。
計算1)売上目標を達成するために必要な来客数を計算する
平均客単価が2,000円のお店で売上目標の200万円を達成するためには、
200万円÷2,000円=1,000人
で、1月に1,000人の来客数を確保しなければなりません。
計算2)1日あたりの売上目標を導き出す
お店の定休日が月に4日と仮定すると、残り27日で200万円を達成するためには、
2,000円×27日=54,000円
で、1日あたり54,000円の売上が必要です。
計算3)座席稼働率から1回転あたりの金額を求める
座席数20席のお店で客席稼働率が70%ということは、
20席×70%=14
満席でも客は14人と考えられますので、1回転につき14人がお店を利用していると仮定できます。1回転分の客数に平均客単価2,000円を乗じると、
14人×2,000円
で、1回転につき28,000円の売上が確保できると見込めます。
計算4)1日の売上目標に対し必要な回転率を考える
1日の売上目標54,000円を1回転分の売上28,000円で割ると、
54,000円÷28,000円=1.9
となりますので、つまり1日に最低でも2回転以上させることによって、月間の売上目標に届くと予想できます。
もちろん、毎日必ずお店が満席になるとは限らず、日によって客単価が2,000円を下回ることもありますので、理想の回転数はあくまでも計算上の目安に過ぎません。従って、回転数や客席稼働率は、週や月単位で何度も計算し続けることが大切です。
繁盛するお店、お客様が集まる飲食店の内装デザインはこちら
おわりに
回転率はお店の雰囲気や座席数によって異なるため、ご自身のお店にとって理想的な回転数を常に計算するよう習慣化しておくことが大切です。すべてのお客様にくつろいでもらうことだけを追求し過ぎず、時には回転数を高めるためにあえて居心地を悪くする工夫も取り入れて、売上を維持するための回転数を保つよう心掛けましょう。